イランがイスラエルに報復攻撃:報復の応酬にエスカレートするか
イランがイスラエルに報復攻撃
10月1日の東京市場では、「石破ショック」を乗り越えて株価は値を戻したが、2日には株価は再び下振れた。主な要因は、1日にイランがイスラエルに報復攻撃を行った、という地政学イベントである。中東情勢の緊迫化から、一時、米国株は大幅に下落し、原油価格も大きく上昇したが、短期間で安定化への動きが見られた。イランの対応は引き続き自制されたものであり、紛争が中東地域全体に一気に広がり、原油供給に大きな支障が生じるリスクはまだ大きくない、との見方に落ち着いたためだろう。 しかし、今後の情勢はなお予断を許さない。 イランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」は1日に、イスラエルを弾道ミサイルで攻撃した。イスラエルに対するイランの直接攻撃は、4月に続き2回目となる。イランが4月にイスラエルを攻撃した際には、100発以上の中距離弾道ミサイル、30発以上の巡航ミサイル、150機以上の攻撃型ドローンなど、合計で300以上を発射した。今回使われた弾道ミサイルは、180発以上だったという。またイラン国営放送は、極超音速ミサイルも初めて投入されたとしている。
イランは現時点ではエスカレーションを望まないか
イランは、イスラム主義組織ハマスの最高幹部イスマイル・ハニヤ氏が7月に首都テヘランで殺害されたこと、9月にイスラエルのレバノン空爆でヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ師と、革命防衛隊の軍事顧問アッバス・ニルフルシャン准将が殺害されたことへの報復としている。 ただし報復行動を直ぐには行わず、イランは、パレスチナ自治区ガザの戦闘を巡る停戦交渉を見守っていたとみられる。しかし、停戦交渉は進まない中、1日にはイスラエルのレバノン地上侵攻が行われたことが、イランの報復攻撃の最終的な引き金になったと考えられる。 イラン国営プレスTVは1日に、革命防衛隊の声明として、攻撃はイスラエルの空軍基地やレーダー基地のほか、「抵抗の枢軸」と呼ばれる中東各地の親イラン武装組織の指導者らの暗殺計画に使用された拠点を標的としていた、と報じている。声明によると、革命防衛隊は発射したミサイルの90%が標的に着弾した。 他方、イスラエル軍側は、発射されたミサイルの多数を迎撃したとしている。また米国のバイデン大統領は、イランのミサイル攻撃を受けたイスラエルを全面的に支持する姿勢を鮮明にしたうえで、「攻撃は失敗し、効果はなかった」と説明した。 4月の攻撃の際には、イランは国交のない米国にスイスを通じて攻撃を事前に伝えていた。しかし今回は、米国への事前の警告はなく、米情報機関が独自に攻撃の兆候をつかんでいた。この点からすると、イラン側の姿勢はより強硬になったようにも見える。しかし、攻撃対象は軍事施設などに限定された。 イラン外務省は1日の声明で「長い自制の末の選択だ。イスラエルと異なり、イランは軍事・安保施設のみを標的とした」と主張している。また、イスラエル側が報復攻撃をしなければ、イラン側の攻撃はこれで終わる、とも説明し、イランとしては、事態をエスカレーションさせたくない、との意向もにじませている。