年末年始に観たい!『ザ・ロック』マイケル・ベイ×クエンティン・タランティーノ!?テイストの全く違う二人がまさかの融合!
難攻不落の刑務所をめぐるアクション快作
今でこそ『アルマゲドン』や『トランスフォーマー』などの巨大なダム建設のような超大作で知られるマイケル・ベイ監督だが、その源泉をたどっていくと『バッドボーイズ』や『ザ・ロック』などの“しなやかさ”を持った快作へと行き着く。とりわけ『ザ・ロック』は彼の長編2作目にしてすでにベテランの風格さえ漂う傑作アクションに仕上がっており、主演のショーン・コネリーをして「私の90年代の出演作の中でもトップ・クラスのお気に入り」と言わしめるほどだ。 タイトルの“ザ・ロック”とは米国のサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ島の異名。この地では60年代まで数々の凶悪犯を収容する連邦刑務所が運営され、監視の目が厳しい上に湾内は潮の流れも速く、脱獄不可能と謳われてきた。だがある日、国防省に不満を持つハメル准将(エド・ハリス)率いる部隊が島内を占拠したことから、その地は難攻不落の要塞と化す。彼らは毒ガスを搭載したミサイルの照準をサンフランシスコへ合わせ、「市民を救いたければ1億ドルを支払え」と要求。 この一大事に対応すべくFBIは毒ガスのスペシャリストであるスタンリー(ニコラス・ケイジ)を現地へ向かわせる。ただし、“ザ・ロック”は付け焼き刃の知識で潜入できる場所ではない。そこで案内役として名が挙がるのが、かつてこの地から唯一脱獄に成功した男、メイソン(ショーン・コネリー)である。30年ものあいだ別の刑務所に収監されている彼は、元英国の秘密情報部員でありSAS大尉という経歴の持ち主でもある。この一件に協力すれば恩赦を与えるとの条件付きで、島への案内を承諾するのだが・・・。
脚本が完成するまでの舞台裏とは?
実は当初、シュワルツェネッガーにもこの映画の主演オファーが舞い込んだと言われるが、その時、彼に手渡されたのは80ページほどの未完成の脚本で、しかも一部は手書きやメモ書きだった(それを理由にシュワちゃんは辞退したようだが、その時の決断を未だに後悔しているという)。この逸話からも『ザ・ロック』の脚本執筆がてんやわんや状態だったことがうかがえる。 マイケル・ベイ監督作はとにかく数多くの脚本家が参加することで知られている。このことがまるで突貫工事のようだと揶揄されることもあるが、しかし『ザ・ロック』に限って言えば、これは大人数によってもたらされた多種多様な要素が、奇跡的なまでの融合を遂げて昇華された稀有な例と言っていいだろう。一人の頭の中では到底なし得ない振れ幅とストーリー展開、専門性、キャラクター造形が機能し、この映画の面白さを劇的なまでに高めているのは否定しようがない。その執筆の舞台裏はどうなっていたのだろうか。 まず本作にはデヴィッド・ワイスバーグとダグラス・クックという、ストーリー考案と初稿執筆を担ったチームの存在があった。豪腕プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーはここから大幅な味付け作業に取り掛かっていく。まずはマーク・ロスナを投入して、登場人物の肉付けを行った。とりわけ悪役(エド・ハリス)の心情を描き込んで観客側にも共感可能な要素を引き出していった。 ここからは「ノークレジット」の枠。つまりエンドクレジットには載っていない脚本家たちの登場だ。ジョナサン・ヘンスリーは、ミサイルや毒ガスに関する知識やその他の様々なアイディアを投入して輝きを加えていった。ショーン・コネリーも様々なアイディアを自ら投げかけ、特に映画の鍵を握る「元英国諜報部員」「ケネディのテープ」という設定は彼自身の発案だったというから驚きだ。その上、コネリーの台詞に関しては英国出身の脚本家らが本人の意見を聞きながら修正を加えていった。さらに今や『ソーシャル・ネットワーク』脚本などで映画界最高の脚本家とも言われるアーロン・ソーキンも、ニコラス・ケイジとエド・ハリスの台詞に味付けを加えて深みを加えていった。