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【書評】昼間は息をつめて身を隠し、闇のなかで生きる若者たち 『夜を彷徨う 貧困と暴力 沖縄の少年・少女たちのいま』

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婦人公論.jp

◆夜の闇のなかで生きる若者たち まだ幼い顔をしているのに弱肉強食の世界にひきずりこまれ、あっという間に餌食にされていく若者たち。それを「自分を律して生きられないのが悪い。自己責任だ」と切り捨てる社会の空気がこわい。日常的にわが子を殴る親のもとに生まれたり、金に困ったときに売春以外の選択肢がない環境で生きていたりすると、自尊心がもてないためにその場しのぎの安直な選択をしがちだが、それを「自己責任」と呼べるのか。 リゾートのイメージが強い沖縄は、しかし若年層が食い物にされやすい場所だ。昼間は息をつめて身を隠し、夜の闇のなかでようやく歩いたり話したりできるような少年少女に地元の記者が話をきいた新聞連載が、こうして本になった。漂流する少年少女が信じられるのはお金だけ。だからSNSに「仕事を探しています」と書き込み、気軽に見知らぬ人と会う。それが「体を売ります」というメッセージになってしまうことは自覚できないのだ。また、表面的にでも「仲間」との関係をつなぐためなら、クスリも盗みも受け入れる。 バイクを盗んでいるときだけうきうきした気持ちになれるのは、それが唯一、自分の技量で現実との関係をむすべる瞬間だからだろう。正体のわからない多くの人たちとスマホの位置情報を監視しあう「ストーカーアプリ」を喜々としてインストールしてしまうのは、自分の存在を誰かに気にかけてもらいたいからだろう。でもかれらは自分から「助けて」と言えるほど、人を信頼できないのだ。 われわれ大人は、少年少女を育てることをせず、使い捨てにしていると思う。それは少子化などよりよほど深刻な問題ではないだろうか。 『夜を彷徨う 貧困と暴力 沖縄の少年・少女たちのいま』 著◎琉球新報取材班 朝日新聞出版 1400円

渡邊十絲子

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