もみ殻″そのまま″ボイラー投入 燃油代替に温泉施設で稼働 秋田県大仙市
秋田県大仙市の温浴施設で、もみ殻を加工せずに燃料として投入できるボイラーが登場した。もみ殻は大潟村の企業が県内の農家から買い取ることで、廃棄などしていた農家のコスト削減にも貢献。燻炭(くんたん)は土壌改良材として利用できる。燃油価格が高騰する中、化石燃料の代替としても期待がかかる。 もみ殻はもみの重量の約20%を占める。もみ殻の活用に詳しい秋田大学大学院の熊谷誠治教授によると、国内では年間で約160万トン発生する。そのうち50万トンほどは廃棄や農地にすき込むなどしているが、活用が進んでいないとみられる。 大仙市の「西仙北ぬく森温泉 ユメリア」では2月、もみ殻を活用したボイラーが稼働した。開発したのは大潟村のもみがらエネルギー(株)。田村登司社長は同村で水稲35ヘクタールを経営する農家でもある。 従来のもみ殻を使ったボイラーは、小型の熱出力5万キロカロリーを中心に施設園芸などで使われてきた。今回、開発したのは20万キロカロリーと大型で、サイロへ約2・5トンを投入でき、3日連続で稼働可能だ。もみ殻を粉末にする必要もない。
年間120トンのCO2削減効果
稲の成長過程で二酸化炭素(CO2)を吸収するため、もみ殻を燃焼してもCO2排出量はゼロとみなせる。着火の際にLPガスを使う以外、燃料を使わないため、従来の油を使うボイラーと比べて年間120トンのCO2削減効果がある。経費削減も20%可能だ。 もみ殻は市内の農業法人から1キロ当たり5円で買い取り、温浴施設に、販売する予定。燻炭になったもみ殻は、温浴施設が100リットル当たり1100円で農家や家庭菜園の愛好者らに販売する。循環型農業の実現だけでなく、施設側も経済的な負担が軽減する仕組みだ。 価格は6000万円だが、環境省の補助金によって導入経費を3分の1に抑えられる。田村社長は「もみ殻は木質チップと違い、水分量が一定で燃焼させやすい。もみ殻を活用した熱利用をさらに進めたい」と話す。
日本農業新聞