「心配なく試合で戦える状態を、選手と一緒につくれる存在でありたい」カープ・苫米地鉄人トレーナーが語るやりがいとは
カープ球団を支える様々な人たちは、どんな仕事をしているのか?本連載では、さまざまな立場・場所からチームを支える人たちにスポットライトを当て、裏側の役割を探っていく。 【写真】現在はスコアラーとして活躍するカープOB・白濱裕太さん 今回登場するのは、現役時代は投手としてカープでプレーした苫米地鉄人さん。現役引退後は専門学校で国家資格を取得し、2010年にトレーナーとしてカープに復帰。トレーナー歴13年目となる苫米地さんに、現在の仕事、きっかけについて聞いた。(全2回・第2回) ◆トレーナー冥利に尽きるのは、何よりも『選手が元気で活躍してくれる』こと 現役引退後に国家資格と取得し、整形外科で1年半ほど勉強をさせていただきました。その後、さまざまなご縁があり、カープ球団にトレーナーとして復帰させていただくことになりました。「この仕事をやるならばやっぱり野球の現場に行きたい」という思いがありましたし、もちろん球団に恩がありましたから。選手と一緒に成長していきたいという気持ちでした。とは言え、すべてゼロからのスタートなわけですから、自分自身で信頼を勝ち取っていかなければならない、そういう状況だったと思います。 トレーナー1年目は10月にカープに復帰した直後、フェニックス・リーグに、即同行となりました。翌年は二軍担当となり、その翌年から長く三軍を担当しました。三軍では故障した選手のリハビリ、復帰していく段階の運動などをサポートします。その間、新人の強化選手を担当したりもしていました。故障選手については選手によって症状が違いますし、当初は自分の力の無さを感じることもありました。ですが、経験を重ねる中で『今日ここまでできて良かった。明日からはもう1段階上げてもう少し頑張っていこう』と、選手の回復を見る中で小さな喜びの積み重ねだと実感しました。特に三軍は毎日同じ選手を見て、選手とマンツーマンになる時間も多いですから深い付き合いにもなります。そういう選手が回復する姿を見るのは本当にうれしいものです。逆に、選手の治療をして、あまり結果が出なかったときは後悔ばかりで、『もう少し何かできたんじゃないか』という思いになります。同時に、選手のメンタルもしっかりと見ることが大事だということも常に考えていました。 現在は一軍を担当していますが、多少なりとも選手時代の経験が役立っていると思います。現役時代に1年間しっかりと一軍で活躍した経験はありませんが、たとえば投手であれば、打たれたとき、結果が出ないときの悔しさは分かっているので、選手に声をかけるときに、自分の経験を活かすことができればといつも考えています。 トレーナーとしてのやりがいを言うならば、シンプルに〝選手が元気で活躍してくれること〟に尽きます。一軍はトップアスリートの集まりですし、毎日極限の状況でプレーをしています。それを日々見ながらサポートさせてもらっていますが、選手が「痛みの峠を越えた」とか「あれが効いた」など、少しでも体の動きなどが良くなっているときは、すごくうれしいですし、少しでも力になれたという実感がある瞬間かもしれません。 僕らだけではできないことがたくさんあります。当然選手個人の努力が1番大事ですし、大した仕事を僕らはできないですが、体に関する知識であったり、アドバイスも含めて、自分たちの知識で成長していく選手にとって少しでも良いアドバイスができればと思っています。またベテラン選手に対しては、とにかく故障なくプレーできる体を一緒につくっていけたらと思っています。 トレーナーとして目指したい姿は、選手たちが戦うための準備のサポートをすること。それしかありません。問題なく、心配なく試合で戦える状態を選手と一緒につくっていける存在でありたいです。その上で、チームが勝ってくれることが1番ですので、微力ながらも、それをサポートしていければと思っています。 苫米地鉄人(とまべち・てつと) 1981年9月22日生、愛知県出身山梨学院大付高-広島(1999年ドラフト6位)。プロ1年目の2000年、高卒ルーキーながら開幕一軍を果たすなど2勝をマーク。2002年は5勝を記録する活躍を見せる。その後は故障などもあり、2006年限りで現役引退。その後、広島市内の専門学校鍼灸科に進学し、国家資格を取得。2011年10月にトレーナーとしてカープに復帰。以来、三軍、二軍担当を経て、現在は一軍担当トレーナー。
広島アスリートマガジン編集部