表千家北山会館の開館30周年を記念

利休が所持した茶碗「禿」。「利休がそばに置いた愛蔵の茶碗」と説明する左海宗匠（京都市北区で）

　茶にまつわる展覧会が、北区と宇治市で開かれている。茶の湯文化を発信する表千家北山会館（北区）の開館30周年記念特別展「わびと数寄　受け継がれる利休の心」（読売新聞社など後援）では、表千家伝来の名品と、自由に美を求めた数寄者が集めた逸品など約120点を展示。底流する利休の精神を伝える。（木須井麻子、冨浪俊一）

珠光寄竹手桶水指　利休在判（北村美術館蔵）

　茶の湯は室町～安土桃山時代、千利休が心の交わりを重んじたわび茶を大成。三千家を中心に武家や公家、町衆らに広がり、諸流派が生まれた。明治以降は近代数寄者と呼ばれる財界人らが楽しみ、発展に貢献した。

野々村仁清作　色絵鱗波紋茶碗（北村美術館蔵）

　特別展では、室町～近代の茶の湯の展開を道具でたどる。「珠光寄竹手桶水指」は茶道具に身近な生活用具を取り入れた先駆けで、わび茶を創始した村田珠光、それを深めた武野紹鴎（じょうおう）、利休へと継承された。黒樂茶碗（くろらくちゃわん）「禿（かむろ）」は、表千家家元で営まれる50年ごとの遠忌の茶事で用いられる特別な道具だ。

　実業家で茶人だった北村謹次郎（1904～91年）の道具を収蔵する北村美術館（上京区）が特別協力。752年の東大寺大仏開眼会で使われた楽器を花入（はないれ）に転用した「黒漆鼓胴」、優美な京焼を完成させた野々村仁清の「色絵鱗波紋（いろえうろこなみもん）茶碗」（重要文化財、後期）などを出展する。

　企画を統括した表千家不審菴（ふしんあん）文庫長、左海大（さかいひろし）宗匠は「各時代の茶人の思いがこもる道具に利休の心を訪ね、現代の茶の湯を見直すきっかけになれば」と話す。

　一部展示替えがある前後期制で12月15日まで（後期は11月1日から）。休みは月曜（祝日の場合、翌日休館。10月28日は開館）と10月30、31日。一般2500円など、中学生以下無料（呈茶含む）。会期中に北村美術館の木下收（おさむ）館長やMIHO　MUSEUMの熊倉功夫館長らによる市民講座がある。問い合わせは表千家北山会館（075・724・8000）。