膨大な予算を投じてスタジアムを建てる必要性はあるの? アメリカZ世代が“オリンピック”への本音を語る
◆予算を抑えたパリ・オリンピックへの評価は?
もう1つ、若者たちが注目しているのはオリンピックにかかる予算です。パリ・オリンピックの予算はこれまでに比べてかなり低く、報道によると記録的な予算オーバーとなった東京オリンピック約6割、リオ・オリンピックの約4割とされています。その理由は、新しいスタジアムなどの競技施設をほとんど作らなかったことにあります。ラボメンバーたちはどのように考えているのでしょうか? ミクア:オリンピックのために新しいスタジアムを建設するなんて知らなかったし、考えたこともなかった。オリンピックだからといって、新しいスタジアムのためにそんなに膨大なお金を使う必要はあるのかな? オリンピックってそこまで重要なの? そのお金を必要としている人がたくさんいるのに、新しいスタジアムにお金を使うっておかしくない? もし私がその国に住んでいたら、ちょっとムカつくと思う。オリンピックのためにそんなに使えるお金があるなら、国内で苦しんでいる人を助けるために使ったほうがよくない? もっと大事なことはたくさんあるのに、スタジアムにお金を使うのはバカバカしいと思う。 ヒカル:そうだよね。たしかリオ・オリンピックだったと思うけど、せっかく作ったスタジアムが今ではまったく使われていないんだよ。なのにメンテナンス費用などがかかるから、さらに無駄なお金が使われているんだ。たまにスポーツイベントやアーティストのライブなどに使われることはあっても、それだけでは毎年のメンテナンス費用をカバーできないよね。 だから、街のなかでお金を食いつぶすただの空き箱になってしまっているんだ。写真では今、まるでゴーストタウンのように見える。ホントに驚きだよ。 オリンピックのために新しいスタジアムを建設していたなんて予想外だった、というのがZ世代の本音。「そんなお金を使うのなら、今必要な人のために使ったほうがいい」という意見、実はアメリカの若いZ世代に共通した価値観です。 施設を作ることで儲かるのは建設業者など関連のビジネスだけで、そのお金が庶民にも再分配される、いわゆるトリクルダウン理論を信じている人は今ではほとんどいません。それどころか、大企業ばかりが儲かる行き過ぎた資本主義を強く批判し、国に対して社会保障の充実を求めるのも、この世代の大きな特色です。 今回のパリ・オリンピックは開会式からパリという街の魅力をフルに生かし、スタジアムも作りませんでした。「今あるものを生かす、お金を節約しサステナブルにやるという意味では、Z世代のオリンピックへの見方をポジティブなものに変えるかもしれません」とシェリーは話し、話題を締めくくりました。 (interfm「NY Future Lab」2024年8月7日(水)放送より)