年金の額が同じでも、住む場所によって手取りが変わるって本当?
老齢厚生年金や老齢基礎年金などの額面が同じでも、住む場所によって手取り額が変わることをご存じでしょうか。 年金は老後生活を支える大切な収入源となるため、手取り額を少しでも増やす方法を知っておくことは大切です。そうすれば、いざというときに検討できます。 ここでは、年金の手取り額が住む場所によって変わる理由について解説します。
年金の平均受給額
厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年度の老齢厚生年金(厚生年金)の平均受給額は月14万6145円です(国民年金含む)。 また、老齢基礎年金(国民年金)受給者の平均受給額は5万6358円でした。近年の老齢厚生年金(国民年金含む)の平均受給額は、図表1のとおりです。
出典:厚生労働省 令和元年度、令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 上記のとおり、老齢厚生年金の平均受給額は14~15万円程度になります。
年金から引かれるもの
老齢厚生年金や老齢国民年金の振り込まれている金額は、額面から住民税や国民健康保険料などの税金や保険料が天引きされた金額です。 年金は老後生活を支える大切な収入となりますので、年金からどのような税金・保険料が天引きされるのか把握しておく必要があります。ここでは、年金から引かれる税金や保険料について見ていきましょう。 ◇所得税 次のような場合、年金に対して所得税がかかります。 ・65歳未満で年金収入が108万円以上ある ・65歳以上で年金収入が158万円以上ある 基礎控除(48万円)と公的年金等控除(65歳未満、130万円未満:60万円、65歳以上、330万円未満:110万円)があるからです。そのため、65歳未満の場合は年金が月額9万円、65歳以上の場合は月額13万5000円までの方は所得税がかかりません。 ◇住民税 65歳以上で老齢基礎年金の老齢年金・退職年金を受給していて、年間の受給額が18万円以上の場合は住民税が天引きされます。 住民税は、所得割額と均等割額で構成されており、年金収入から公的年金等控除額や社会保険料控除額などを差し引いた金額に住民税率を掛けて、調整控除額を引いて所得割を求めます。均等割は一律の金額です。 ◇国民健康保険料 65歳以上75歳未満で老齢基礎年金の老齢年金・退職年金、障害や死亡を理由とする年金を受給していて、年間の受給額が18万円以上の場合は国民健康保険料が天引きされます。 国民健康保険料は、医療分(基礎賦課額)、支援分(後期高齢者支援金等賦課額)、介護分(介護納付金賦課額)を合算して算定される仕組みです。所得割額と均等割額で構成されており、計算方法や料率は市区町村で異なります。なお、75歳以上になると後期高齢者医療保険料へと移行します。 ◇介護保険料 65歳以上で老齢基礎年金の老齢年金・退職年金、障害や死亡を理由とする年金を受給していて、年間の受給額が18万円以上の場合は介護保険料が天引きされます。 65歳以上の方は第1号被保険者です。介護保険料は、基準額に所得で段階的に設定された割合を乗じ、算定します。段階や基準額などは市町村ごとに条例で定められています。例えば、東京都大田区では、1~17段階まであり、基準額×0.25~3.55が介護保険料です。 ◇後期高齢者医療保険料 後期高齢者医療制度は、75歳以上の方や一定の障害がある65歳以上の方を社会全体で支える仕組みです。 75歳以上または65歳以上75歳未満で後期高齢者医療制度に該当し、老齢基礎年金の老齢年金・退職年金、障害や死亡を理由とする年金を受給していて年間の受給額が18万円以上の場合は、後期高齢者医療保険料が天引きされます。 後期高齢者医療保険料は所得割額と均等割額で構成されています。東京都内の所得割額は所得金額×9.49%、均等割額は被保険者1人あたり4万6400円です。