開幕は誰?阪神の新人木浪の台頭で遊撃定位置争いが激化
木浪の台頭で激しくなってきたのがショートのポジション争いだ。 鳥谷はオフに「もう一度ショートで勝負したい」と矢野監督に直訴。周囲が「鳥谷が明るく元気になった」と驚くほど、今キャンプで、鳥谷がかもしだす雰囲気は一変している。若手と同じく全メニューを消化。紅白戦など実戦にも早い段階から出場するなど、すべてに積極的だ。ただ2年間、ショートを離れていたブランクは大きい。鳥谷の代名詞である球際の強さがまだない。バッティングの方はマイナーチェンジしているが、その影響からか、この日も、3回の2打席目に岡田のストレートに対して明らかに差し込まれてしまっていた。しかし彼の実績を考えるとオープン戦の最後の調整まで確認しなければ、現在地を図ることはできないだろう。 一方、成長が目につくのが、7年目の北條だ。木浪と同級生で青森の光星高時代は木浪の甲子園出場を阻止してきた。 昨年は不慮のアクシデントに見舞われてしまったが、62試合に出場、打率.322、1本、20打点の成績を残した。そこからのさらなる上積みを感じさせるようなキャンプ内容。バッティングの軸がぶれなくなり、右打者の少ない打線のバランスからすれば、現段階でのショートの1番手は北條かもしれない。 元阪神の評論家、池田親興氏も、「木浪が実戦的で、投手側から見ると、攻め辛いバッティングをしている。スイングは力強いし逆方向に打てるのも強みだろう。ただ北條に逞しさと安定感が出てきた。鳥谷も元気。競争が生まれてチームが活性化している。二塁には上本、糸原もいるから、ショートだけでなく、糸原をどこで使うかも含めて内野の布陣について矢野監督は悩むかもしれない。競争は結果と内容の両方を見るべきで周囲だけでなくチーム内の誰もが納得する形にしなければ一体感が出てこないと思う。その起用法に矢野監督は監督の資質を問われるだろう」という見方をしている。 確かにセカンドも上本博紀(32)とキャプテンの糸原健斗(26)のポジション争いが激化しており、糸原はショートもできるため内野全体での競争が高いレベルで活性化している。 金本前監督時代の2017年のキャンプも、ショートは鳥谷と北條の競争でスタートしたが、2月のキャンプ終了と同時に金本前監督が、もう北條にショートのポジションを明け渡し、結果的に、そのシーズン、北條は実質2年目となるプロの壁にぶつかって開幕構想は崩れた。鳥谷は三塁でレギュラーを奪いゴールデングラブ賞を獲得している。「競争させる」と言いながらも本当の競争にはなっていなかった。昨季は、ショートは糸原で、巨人の開幕投手、菅野智之に対して、開幕戦では「2番・二塁」に左の鳥谷を使ったが、2戦目に左腕の田口麗斗がくると、さっと「2番・上本」に変え、投手に応じてツープラトンで臨むプランを披露したが、上本の怪我などもあり、そのツープラトン構想もうまく機能しなかった。 対して矢野監督は、どんな起用法を考えているのか。木浪は、どこでも守れるため、打撃の調子や、相手投手との相性を見ながら、毎試合、流動的にポジションを変えていくのか、それとも、ここからのオープン戦を通じた競争で、レギュラーポジションを明確に決めてしまうのか。最後の最後まで矢野監督を悩ますほど、木浪、北條、鳥谷がオープン戦で好調を維持して競争をさらに激化させることが、得点力不足解消をテーマとするチームの底上げにつながることは間違ない。 ただ池田氏が指摘するように矢野監督の起用法に明確なビジョンがなければ金本政権の二の舞に終わってしまう危険性も孕んでいる。