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史上最年少タイトル獲得へあと1勝、神童・藤井聡太は金字塔を打ち立てるか

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nippon.com

下馬評通りに進行しつつある棋聖戦

現在17歳の藤井七段は14歳でデビューして以来ずっと、現役最年少棋士であり続けてきました。そして現在、彼の世代の前後を見渡してみても、十代の棋士は藤井七段しかいません。 ではなぜ、特異とも言える藤井七段の存在があるのか。それはやはり、将棋界四百年の歴史でも図抜けた才能を持って現れてきたから、と理解するほかなさそうです。 次代を担うであろう若手が複数のタイトルを持つような当代の第一人者と番勝負で対峙する際、下馬評は当然のように、「第一人者乗り」が圧倒的となります。そして実際に、まずは若手が苦杯を喫するということが多い。 2003年。19歳の渡辺明五段(当時)が羽生善治王座に初挑戦した際には、途中、2勝1敗として先行。大健闘をしながらも、最終的には2勝3敗で敗れました。終わってみれば、これは下馬評通りだったということになります。 時が移り、渡辺棋聖はトップクラスとして、若き挑戦者を迎え撃つ立場に回りました。特に防衛戦では無類の強さを誇り、年下から挑戦された際にはいつも退けてきました。 しかし、今回の下馬評は筆者が見る限り、「藤井乗り」の声が多かったように思われます。この空気感は過去にはあまり例がなかったのではないでしょうか。 棋聖戦は現在、第2局まで終わっています。いずれも大変な熱戦、名局でした。そして結果は藤井七段が2連勝。棋聖位獲得まであと1勝と迫っています。 「いつ不利になったのか分からないまま、気が付いたら敗勢、という将棋でした」 第2局に敗れた後、渡辺棋聖は自身のブログにそう記しています。敗因不明で負かされてしまった、というわけです。 現在、トップに君臨する渡辺棋聖が弱いわけがありません。それでもいまこうして、藤井七段がタイトルを獲得しようとしているのは、誰も不思議なこととは受け取っていません。ここに至るまで、将棋界の常識では測れないような、底が見えないほどの実力と才能を見せつけてきたからです。 史上最年少四段とはすなわち、史上最高の才能を持つことを意味する可能性が高い。 ただし、それはまだ何とも言えません。将棋界では長きにわたって勝てるかどうかで、才能の有無が明らかとなるからです。 藤井七段が史上最年少でのタイトル獲得という過程を経て、止まることなく史上最強への道を歩んでいくのかどうか。 将棋界は熱い夏を迎えました。注目の第3局は7月9日に行われます。

【Profile】

松本 博文 MATSUMOTO Hirofumi 1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力し、「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)など

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