仏大統領、次期首相の人選急ぐ 政治空白の長期化回避
【パリ時事】フランスのバルニエ首相率いる内閣が5日、下院の不信任案可決に伴って総辞職したことを受け、マクロン大統領は後任の人選を急ぐ。 有力候補として、ルコルニュ国防相(38)ら数人の名前が取り沙汰されている。ただ、過半数に遠く及ばないマクロン氏の中道連合が多数派形成を主導するのは容易でなく、次期内閣は再び「野党の餌食」(仏メディア)になる恐れもある。 マクロン氏は5日、内閣不信任を受けて国民向けに演説を行う。大統領府は演説内容を明らかにしておらず、「新首相の発表ではないか」(仏テレビリポーター)といった臆測を呼んでいる。 不信任は、財政赤字の削減に取り組む2025年予算案を否決に導いた。市場は財政健全化の行方を注視。マクロン氏は、政治空白の長期化を回避して信頼を回復し、金融・経済への悪影響を最小限に食い止める必要に迫られている。 もっとも、アタル前内閣が7月に総辞職した際、9月のバルニエ首相任命までに50日を要した。マクロン氏が今回の事態を見越して以前から周到に用意していなければ、不信任翌日の後継指名は困難と思われる。 首相候補と目されているのは、安定感に優れ政権内の評価も高いルコルニュ氏のほか、中道連合の一角を占める「民主運動」のバイル議長(73)、移民対策で存在感を発揮した中道右派・共和党のルタイヨー内相(64)ら。 問題は、いずれもマクロン氏に近い人物で、左派4党連合や極右・国民連合(RN)の支持を得られるか不透明な点だ。中道連合や共和党の思惑優先の人選になれば、最後に不信任を突き付けられたバルニエ氏の轍(てつ)を踏みかねない。 他方、結束を誇った左派4党連合は、内部の亀裂が鮮明化している。ミッテラン、オランド両大統領を輩出した伝統政党の社会党は、出口の見えない不安定な政局の打開を目指し、対立してきた中道連合に連携の可能性をアピール。混乱に拍車を掛けてマクロン氏を辞任に追い込む戦略の急進政党「不屈のフランス」と距離を置き始めた。