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ピッツァ“マリナーラ”なのにマリン要素がない理由

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dancyu

今回のお題“マリナーラ”には、一体どんな真実が隠されているのでしょうか?私達が一度は食べたことのある、あんな料理やこんな料理には、隠された物語があることをご存知でしょうか?“知る”ことで、同じ料理が明日からちょっと美味しくなる連載をお届けします。 【写真を見る】ピッツァ“マリナーラ”なのにマリン要素がない理由

■船乗りのピッツァ 日本が誇るトッピングフードといえば丼である。牛丼、うな丼、天丼などなど、トッピングの素材がそのまま料理名となっているからわかりやすい。それに比べてナポリが誇るトッピングフード、ピッツァはイタリア語というハンディを差し引いても少々わかりにくい。その最たるものが、くしくもピッツァ二大巨頭とされる“マルゲリータ”と“マリナーラ”だ。 “マルゲリータ”はまだいい。その由来がポピュラーだからだ。ふかふかの厚めの生地に真っ赤なトマトソース、トロリと溶けた白いモッツァレラチーズ、緑色のバジリコがトッピングされたこのピッツァは、イタリア国家統一の旗頭となった国王家の王妃、マルゲリータの名に因むのは有名な話である。1889年、王妃がバカンスでナポリを訪れたときに献上された。先の素材が赤、白、緑のイタリアンカラーとなっていて、イタリア統一の思いをトッピングに表したというわけだ。 問題は“マリナーラ”。ふかふかの生地とトマトソースまではマルゲリータと同じだが、ここににんにくとオレガノをのせる。マリナーラはマリンを思わせるので、海鮮丼のように海の幸がのっているとしっくりくるが、まったく海に関係ないもののトッピングである。木の葉丼なのに木の葉がないくらいの衝撃だ。 そこでイタリア語の意味であるマリナーラ=船乗りから謎を解いてみたい。先のマルゲリータ王妃と違って船乗りは一般人だからか、由来を名言している歴史書はないが、有力な二つの説を見つけた。 一つは船乗りたちがパン屋のあり合わせの材料でつくらせた説。それは750年頃の話で、そのあり合わせの材料というのが、トマトソースとオリーブオイルだけ。船乗りたちが好んで食べたということで名前はいつしかマリナーラになり、やがてナポリの料理で愛用されていたオレガノとにんにくを加えたものが“マリナーラ”として伝わっていった。 もう一つは香り説。 オリーブオイルに火が入ったにんにくとトマトが加わると、船乗りをイメージする海の香りがするから、というのだ。実際にやってみるといい。フライパンにオリーブオイルをひき、薄切りにしたにんにくを加えて火にかける。にんにくがほんのり色づいたところでトマトソースを投入。するとほ~ら、海の香りが……そうかな?そうかも。 そうなのだ。 ではここで改めて疑問が。魚介がたっぷりのったピッツァは一般的に何と呼ぶ?答えは“ペスカトーレ”。訳すと漁師風。なるほど、同じ海の仕事でも漁師と船乗りをトッピングで線引きしたのね。ということで、船乗り丼をつくるなら魚介なしで。 ちなみに 日本ではピッツァは手でつかんで食べるものというイメージが強いが、イタリアでは切り売りピッツァ以外、大抵ナイフとフォークを使う。持つと熱いというだけではなく、食べ方がエレガントというのがその理由。 --------------- ――著者 「土田美登世 編集者・ライター」 つちだ・みとせ コーラをほとんど飲まないが、ピッツァには別。ビールよりもコーラのほうがテンションが上がる。ハンバーガーもそう。アメリカナイズされている? --------------- 文:土田美登世 写真:加藤新作撮影協力:「アンティーカ ピッツェリア ダ ミケーレ恵比寿」参考文献:吉川敏明著『ホントは知らない イタリア料理の常識・非常識』(柴田書店) ※この記事はdancyu2018年7月号に掲載したものです。

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