卓球で「子供が大人に勝てる」のはなぜ? “3つの理由”を専門家が解説
近年、小中学生の若い卓球選手の活躍がメディアで報じられるようになった。特に1月の全日本選手権シーズンには、天才キッズたちが毎年のように一回り以上大きい大人たちをなぎ倒す。 【写真】史上最年少でワールドツアーを制した平野美宇・伊藤美誠 「愛ちゃん」の愛称で親しまれ、ロンドン、リオと2度の五輪でメダルを獲得した福原愛さんも、高校2年生以下が出場する全日本選手権ジュニアの部を中学1年生で制覇した。 男子では張本智和が中学2年生にして大人も出場する一般男子シングルスで優勝しており、2人の最年少記録は現在も破られていない。 今年の全日本選手権でも、一般の部では中学生が大学生を倒したり、ジュニアの部では9歳の選手が高校生に混じって出場するなど話題を呼んだ。 体格に劣るはずの子供が卓球で大人に勝てるのはなぜか? 気になる“3つの理由”を、プロ卓球コーチの織部隆宏氏(ITS三鷹)が解説する。
天才相撲少年は横綱に勝てる?? 卓球の場合は...
卓球ではなぜ体格や体力の差がある大人に対し、子供が勝てるのか?そこには“3つの競技特性”が大きく影響している。 それぞれ詳しく見ていこう。
【理由1】プレーに最低限必要な身体能力レベルは低くてもOK
まず卓球はプレーするのに身体的なハードルが低い。 相手とのボディコンタクトは無く、打つのは3グラム足らずの軽いピンポン玉だ。自分のコートの端からボールを約1.4メートル先にあるネットを超えさせるだけの力があれば相手コートに返球が出来る。トップアスリートでもラケットの重さは200g程度と軽いため、子供がラケットを振り回し、大人が取れない速いスマッシュを連続で打つこともできる。 また選手が動く必要のある範囲も比較的狭い。卓球台の自陣の面積は約2平米でテニスコートの65分の1だ。この畳1畳より少し大きいぐらいのコートの周りを動き回れれば全てのボールを返せる。そのため子供でもボールに手が届くのだ。もちろん高身長で手足が長い方が、ボールに手が届きやすいし、筋力がある方が速いスマッシュが打てるのが、勝つための必須条件ではない。 他のスポーツと比較するとわかりやすいが、体と体が直接ぶつかり合うスポーツでは、体格差が結果と直結しやすい。わんぱく相撲のチャンピオンは横綱を土俵から押し出すのは難しいだろうし、ラグビーで小学生がプロ選手にタックルをしても梨の礫(なしのつぶて)だろう。 一方で卓球の場合は、対戦相手と体が接触することはない。敵は常に卓球台をはさんだ向こう側にいるからだ。 また、ウェイトリフティングや砲丸投げのように重い器具を使用する競技であれば「競技を始めることさえ出来ない」体格・体力の壁が存在するが、卓球にはほとんどない。未熟な体での練習が命の危険を伴うことは無く、早い段階からトッププレーヤーと同じ訓練を行うことができる。