大人と子ども、時間の感じ方なぜ違う 原因は「代謝」の違い?
子どものころは1日がとても長かったのに、いまは1年があっという間に過ぎる。一体何が違うのでしょうか。そんな時間の不思議を次々に解き明かしているのが、千葉大学大学院人文科学研究院の一川誠教授。人間の心や行動の特性を自然科学的な方法で解明する実験心理学を専門としています。一川教授に時間に関する研究の成果と魅力を聞きました。 【写真】昔のイメージとは大違い? 女子高生に人気の意外な大学
子どものころは1日が長かったのに、大人になるとあっという間に過ぎていくように感じます。これはなぜなのでしょうか。一川教授は、体の「代謝」が関係していると言います。代謝とは、生物が生命を維持するために必要な体中の細胞の活動の状態です。 「脳のどこかに、ある一定のペースで神経信号を発信するところがあり、その信号の蓄積量が、感じられる時間の長さに対応すると考えられています。信号を発信する器官も体の一部なので、体の代謝が激しいと速いペースで信号を発信します。すると短い時間で信号がたくさん蓄積されるので、体の外の時計の時間がゆったり感じられることになります」 代謝は大人より子どものほうが激しいので、子どもは時間をゆったり感じ、1日が長くなるわけです。 「代謝の状態は、だいたい体温と対応しています。子どもは体温が高いですよね。運動した後や発熱した時にも代謝は上がります。朝起きてから夜寝るまでの間にも代謝は随分変わります。だから、代謝が落ちている朝方は時間が速く過ぎるし、代謝が上がってくる午後はのんびり感じられると思います」
人間には時間を感じる器官がない
このように、一川教授は人間が時間や空間をどう体験しているか、そこでどんなことが起きているのかを調べています。これは実験心理学の中でも認知心理学と呼ばれる領域です。人間は同じ時間を長く感じたり、短く感じたりして、時間の感覚が不正確です。というのも、人間には時間を感じる器官がないからです。 「光なら目、音なら耳、味なら舌で感じますが、時間の感覚器官は持っていないので、直接的な知覚情報は得られません。それでも人間は時間の長さ、タイミング、前後の順序を判断しています。どうやって判断しているのかは、とても興味深い問題です」