アーティストと俳優を分けない「人間、北村匠海」になった。自粛期間を経て魅せる新境地
韓国で出会った決め打ちソング
――もともと北村さんはDJ経験があったそうですが、機材はアゲ太郎と同じレコードを使っているのですか。 北村 そうですね、僕もレコード派です。アンプなどが置いてある自宅に、ターンテーブルも置いてあるんですよ。だから個人的にはレコードにも、すごくなじみがあります。レコード屋もよく行きますし。 ――好きなレーベルとかあるんですか。 北村 ちょっとマニアックだと思うんですけど、「Dekmantel(デクマンテル)」は好きですね。アシッドハウスやアシッド、テクノを扱っているオランダのレーベルです。韓国に行ったとき、Dekmantelのレコードを買ってきたらヤバくて(笑)。レコードは、テクノとかクラブミュージックに関するものしか持っていないと思います。クラブミュージックにはFour Tet(フォー・テット)やBoys Noize(ボーイズ・ノイズ)から入って、Dekmantelにハマり、それからはレーベル単位で掘るようになりました。 ――では、レコードはDekmantelのものが多いんですか。 北村 Dekmantelが多いかな。でも、なんだかんだいって「R&S Records(※編集部注:1983年にベルギーで設立された老舗レコード・レーベル)」もたくさん持っています。 ――DJ北村匠海、決め打ちの一曲はなんですか。 北村 Four TetのKHが作った「Only Human」。あれは、やばいですね。めっちゃかっこいい。
音フェチにはたまらない音楽映画
――『とんかつDJアゲ太郎』は、音楽をorigami PRODUCTIONSと黒光雄輝さんが担当していることもあり、音楽映画としても最高だと思いました。 北村 映画では、クラブミュージックではない音楽もかかっています。でも、だからこそ幅広い世代に刺さると思うんです。この映画を観て、僕よりちょっと若い世代の人が、昔のヒップホップとかダンスミュージックについて興味を持ってくれたらうれしいですね。 ――この映画を観たら、使われている曲を聴きたくなると思います。「クラブが怖い」と思っている人のイメージも変わりそうですよね。 北村 この映画を通して、音楽業界を活気づけたいです。実際に今、コロナの影響を受けてクラブやDJの方たちは大変な状況がつづいていると思うので。DJをする場面では、そういうシーンに関わる人たちがガッカリしない映画を作ろうと意識していました。 ――めっちゃかっこよかったです。『とんかつDJアゲ太郎』って、一つひとつの効果音も気持ちいいですよね。「とんかつを揚げる音って、映画館で聴くとこんなに心地いいんだ!」と驚きでした。 北村 ほんと、そうですね。 ――北村さん的に、「ここの音がやばい!」というシーンはありますか。 北村 揚げている音もいいんですけど、キャベツを切っているときに包丁がまな板に落ちていく音も好きでした。映画館ってスクリーンが大きいのもそうですけど、自宅では聴けない音をめちゃくちゃ楽しめる空間なので、“音フェチ”にはたまらない映画だと思います。