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「緊急事態宣言」は本当に意味がなかったのか?【中野剛志×佐藤健志×適菜 収:第2回】

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危機が発生すると、必ずデマゴーグが出現する。今回、新型コロナウイルスのパンデミックがあぶり出したのは、無責任な極論、似非科学、陰謀論を声高に叫び出す連中の正体だった。彼らの発言は二転三転してきたが、社会に与えた害は大きい。実際、人の命がかかわっているのだ。追及すべきは、わが国の知的土壌の脆弱性である。専門家の中でも意見が分かれる中、われわれはどのように思考すればいいのだろうか。中野剛志×佐藤健志×適菜収が緊急鼎談を行った(第2回) この記事の写真はこちら ■医療体制の崩壊を防ぐための「接触8割減」 適菜:しかし、西浦氏の活躍はすごかったですね。天才と呼ばれる人がどのようにものを考えて、どのように動くのかよくわかった。北海道大学の高等教育推進機構科学技術コミュニケーション教育研究部門のサイトに西浦氏のインタビューが載っているのですが(https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/contents/article/1959/)、未知のウイルスとどのように戦ってきたかを振り返っている。2019年12月末に武漢でCOVID-19の患者がでて、その後、今年の1月13日にタイ、1月16日に日本でも患者が出た。そのときに、西浦氏はパンデミックになる可能性が高いと判断し、チームをつくり、データを集め、シミュレーションを徹底的に行った。まさに第1回でお話した「総力戦研究所」さながらです。それでいろいろなことがわかってきた。彼らがいなかったら、日本は本当に危なかったと思います。  西浦さんはこう言っていた。「若手や大学院生には、何ヶ月も厚労省ビルにいさせて苦労をかけました。彼らは研究して学位をとらなければなりませんが、厚労省の中では大臣令もありますし、世の中も僕たちのことを見ているので、平日は夜中もふくめて研究できませんでした。時間は感染症対策のために使おうと、休日に研究していました。大変だったと思いますが、対策の現場を見せられたのは良かった面でもあるかなと思います。10年後、20年後、もしも僕がいない場合は彼らが国を守りますから」 中野:専門家会議も、分析や提言を分かりやすく何度も公表し、記者会見も何度も開いた。マスコミにも露出した。本当に頭が下がります。専門家会議の先生方や西浦先生のストレスは想像を絶するものがある。彼らの言っていることを聞いているとよく分かるのですが、彼らに対する批判は的外れなことが多い。要するに批判者たちは、専門家会議があれだけ発信しているというのに、何を言ってるのか聞いてないんですよ。 佐藤:人間、何かを理解したくても理解できないということはありえます。ただし何かを理解したくないのに、理解できるということはありえない。前回も出た話です。 中野:藁人形論法かどうかであれば、批判された人の意見を聞けば、素人でも分かります。第1回でも言いましたが、尾身氏も西浦氏も「感染リスクをゼロにしよう」などとは言っていない。緊急事態宣言や接触8割削減を求めたのは、尾身氏が言っていたように、医療崩壊が怖かったからです。医療崩壊しないように感染リスクをコントロールすることを目標にしていました。医療のキャパシティが小さかったので、感染者数がたいして多くみえなくても、外出制限を求めざるを得なかった。また、仮に新規感染者数が減るフェイズに入ったとしても、累積で入院者数が増えていけば医療崩壊してしまう。だから、厳しい措置をとり続けた。こうしたことは、感染症学や公衆衛生はド素人の私でも理解できましたよ。 適菜:医療のキャパシティの問題なんだと。医療体制を整えるための時間稼ぎですね。 中野:そうです。尾身先生たちは、医療のキャパシティが問題だと明言していました。しかし、藤井氏の公開質問状は、「新規感染者数が減っているから緊急事態宣言は不要だった」と専門家会議を批判している。繰り返しますが、専門家会議の狙いは、新規感染者数の減少というよりは、医療崩壊をしない範囲内での感染者数のコントロールにあったのに。要するに、専門家会議の意図を理解しようともせずに、単にいちゃもんをつけたわけ。

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