【ショートでも能力はワイド】ランドローバー・ディフェンダー90 P400へ試乗
110より435mm短いホイールベース
text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー) translation:Kenji Nakajima(中嶋健治) 新しく生まれ変わった、ランドローバー・ディフェンダー。先にディーラーへ並んだのは、ロングホイールベース版の110だった。 【写真】ディフェンダー Gとジープを比較 (127枚) その理由は理解できるものの、ディフェンダーのアイコンともいえるプロポーションの90を、待ち遠しく感じていたのは筆者だけではないだろう。いよいよという矢先、新型コロナウイルスの影響で、デリバリーはさらに3か月も遅れていた。 ようやく、90の試乗機会がやってきた。先行する110との違いや共通点を、確かめる時だ。 ディフェンダー90は、110とモジュラー関係にある。モノコックのシャシーやサスペンション、ステアリング、パワートレインなどは、基本的に共有している。 一方で20インチ、実際には435mm短いホイールベースによって、車重は軽くなる。ハンドリングや乗り心地へも影響はある。もちろん、車内空間も短くなっている。 今回試乗したのは、マイルド・ハイブリッド化されたガソリンエンジンを積むP400。ディフェンダー90の中では、最高のパフォーマンスを発揮するパワートレインだ。 車重の違いは、全長の差ほど大きくはない。同等のスペックの110と比べると、65kg軽量なだけ。3列目シートを110に装備すれば、120kgほどの違いになる。 90のリアシート空間は、110の2列目シート周りとほぼ同等。しかし90は3ドアだから、明確にリアシートへの乗り降りがしにくい。プライバシーガラスの場合、薄暗くも感じてしまう。 リアドアは、110と同様に大きく開く。荷室はモデルチェンジ前の90と比べると、格段に広くなっている。
過去最もパワフルな400psマイルドHV
ディフェンダー P400が搭載するのは、3.0Lの直列6気筒ガソリン・ツインターボエンジン。英国ウルヴァーハンプトン近郊のエンジン工場で製造されるインジニウム・ユニットとして、最新のものとなる。 量産ディフェンダーの中では、過去最もパワフルで加速も鋭い。0-100km/h加速は6.0秒、最高速度は193km/hとなっている。動的性能と引き換えに、WLTP値での燃費は8.9km/Lと振るわない。CO2の排出量も、256g/kmだ。 近年のジャガー・ランドローバーの動きに合わせ、P400のエンジンもISGが備わるマイルド・ハイブリッドだが、経済的な恩恵は限定的。そのかわり、滑らかさと静かさは優秀。6500rpmまでスムーズに吹け上がり、低回転域から豊かなトルクを生み出す。 最大トルクを2000rpmから得られるから、回転数を上げる機会は限定的だろう。トランスミッションは8速ATが組み合わされる。 新しいディフェンダー90を運転してみる。110との違いとして真っ先にわかるのが、機敏な動き。ホイールベースが短いおかげで、タイトにクルマは向きを変える。 2つ目は、減速時のノーズダイブや加速時のノーズリフトが、110より少し大きいということ。フロントに、パワフルで重たい6気筒エンジンが載っていることも影響しているだろう。ただし、欠点と呼ぶほどではない。 ノーズの上下動を抑えるため、車高調整式のエアサスペンションを引き締めるという気持ちにはならない。オンロード性能にも長けたオフローダーの素晴らしい乗り心地が、悪化してしまう可能性があるためだ。