NVIDIAやTSMCとの協業で加速 最先端半導体設計を支援するAnsys
アンシス・ジャパンは2024年12月12日、半導体製造装置/材料の国際展示会「SEMICON Japan 2024」(会期:2024年12月11~13日/場所:東京ビッグサイト)に併せて記者説明会を開催し、同社における半導体設計向けの最新の取り組みについて紹介した。 Ansysが提供するCo-Packaged Opticsのためのマルチフィジックスソリューション 説明会に登壇した米Ansys アジア半導体セールス担当ディレクター(Director,Asia Semiconductor Sales)のビル・ベイカー(Bill Baker)氏は、半導体設計向けの最新の取り組みとして、NVIDIAとのAI(人工知能)駆動の半導体設計に関する発表と、これまで進めてきたTSMCとの協業の概要について説明した。
AI駆動の半導体設計でNVIDIAとの協業を強化
現在、AnsysはNVIDIAとの協業を強化しており、NVIDIA GPUに最適化されたAnsysソルバーの強化、NVIDIA AIを取り入れたAnsysシミュレーションの実現、物理ベースのデジタルツイン構築、生成AIのカスタムモデルを構築するプラットフォームサービス「NVIDIA AI Foundry」を活用した大規模言語モデル(LLM)開発、仮想コラボレーションとリアルタイムシミュレーションのためのオープンプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を用いた6G(第6世代移動通信システム)の研究などに取り組んでいるという。 2024年11月には、“NVIDIA AIを取り入れたAnsysシミュレーションの実現”に関連し、物理ベースの機械学習モデルを開発するAIフレームワーク「NVIDIA Modulus」(以下、Modulus)を、半導体マルチフィジックス用プラットフォーム「Ansys SeaScape」(以下、SeaScape)に統合し、AI駆動による半導体設計環境を提供することを発表した。これによりユーザーはカスタマイズされた生成的なAIサロゲートモデル(CAE代理モデル)を作成でき、設計最適化の大幅な効率化が図れるようになる。 「ここで重要なのは、Ansysの3Dソルバーが全てSeaScapeプラットフォームに組み込まれており、それらの3DソルバーがModulusのAIモデルのトレーニングに使用されるということだ。また、SeaScapeプラットフォームはAI開発のプログラミング言語として主流のPythonをネイティブでサポートしている」とベイカー氏は説明する。 例えば、マルチフィジックスサインオフソリューション「Ansys RedHawk-SC」(以下、RedHawk-SC)で完成した設計のライブラリを用いて、統合されたModulusフレームワークでAIモデルをトレーニングできる。そして、完成したCAE代理モデルによって解析結果を高速かつ高精度に予測することが可能となり、必要な仕様に基づく最適な設計を短時間で特定できるようになる。 Ansysでは、RedHawk-SC、EMIR(Electro Migration and IR drop)解析の「Ansys Totem-SC」、ESD(Electrostatic Discharge)解析の「Ansys PathFinder-SC」、3DIC向けマルチフィジックス解析の「Ansys RedHawk-SC Electrothermal」(以下、RedHawk-SC Electrothermal)などの半導体設計ソリューション向けに、熱シミュレーションの高速化と電力計算の容易化のために、Modulusが作成したAIアクセラレータを追加する予定だという。 「3DIC(3次元集積回路)の熱シミュレーションの例では、Ansysの3Dソルバーによる解析結果と、ML(機械学習)に基づくCAE代理モデルによる結果予測との誤差は1%よりもはるかに小さいことが分かった。解析スピードも約270倍、さらに別のケースでは1000倍以上の高速化が図れた」(ベイカー氏)