機関長から異例の大抜擢41歳の新人漁労長が遠洋巻き網に挑む! 「大役」背負い平戸市生月町から船出【長崎発】
長崎県平戸市生月町を拠点とする遠洋巻き網漁船団に、2024年夏、異例の抜擢で41歳の新人漁労長が誕生した。機関長から漁の総指揮を任されることになった男性の挑戦が始まった。 【画像】乗組員のために準備された寮
伝統と革新が交差する海の町
江戸時代から捕鯨で栄えた平戸市生月町は、今や長崎県内有数の遠洋巻き網漁の基地として知られている。2024年夏、東洋漁業所属の第八源福丸(199トン)に、新たな船出を迎えた人物がいた。 小野田聡さん(41)は、約50人の乗組員をまとめる漁労長に就任した。「大役ですよ。自分の船団の家族まで背負っているので」と話す長崎市出身の小野田さんは、長崎県立農業大学校卒業後、知人の紹介で船に乗ることになり、エンジンの整備などを行う機関部に配属された。直近の8年間は本船の機関長を務めていた。
異例の大抜擢と期待
そんな小野田さんを抜擢したのは漁師として約50年のキャリアを持つベテランの前任者・松原謙治漁労長だった。漁労長はいわば総監督で松原さんは48歳に漁労長になってから約20年、その大役を担ってきた。 「周りから見たら異例だろう。機関長あがりを漁労長にする、経験もないのに。ただこの子は貪欲さがあるから、その可能性にかけてみた」と松原さんは語る。機関長からの抜擢で、小野田さんは松原さんの指導のもと約2年間修行を積んだ。 第八源福丸の乗組員は約30人で、そのうち3人はインドネシアからの技能実習生だ。乗組員の多くは50代以上だが、最近では若い世代が少しずつ増えている。県外からの就職者のために寮も完備している。「きつい時も楽しい時もあります」と若手乗組員は語る。「魚が取れて歩合が付けば」楽しいという。 他の業種に比べ比較的年収が良いのも魅力だ。若手にとって、地位も待遇も一番の漁労長は憧れの存在となっている。
緊張の初出航へ
小野田さんの初めての船出は北海道・釧路沖を目指した。 2カ月半の漁に向かう中、悪天候に見舞われ、なかなか漁ができない日々が続いた。5日後、ようやく網を入れる機会が訪れた。「レッコー」という小野田さんの合図で、巻き網が投入された。この日は網を2回投入し、109トンのマイワシを捕獲。目標の200トンには届かなかったものの、小野田さんは着実に経験を積んでいる。
変化する海と漁業の未来
温暖化など海の環境変化により、取れる魚種や漁場が変わってきている。松浦のアジやサバなども、小野田さんたちの遠洋巻き網船団が東シナ海などで漁をして水揚げしている。 「その時に合った取り方で、取れなくても次につながる取り方で。毎日勉強ですからね。常に」と小野田さんは語る。技術力や指導力が求められる漁労長の役割。乗組員とのコミュニケーションを大切にしながら、創意工夫を重ね、一歩一歩前に進んでいく決意だ。 長崎の海の未来を担う新人漁労長・小野田さん。未経験の地へと踏み出したからこその強い覚悟と思いを胸に小野田さんはきょうも漁に出る。 (テレビ長崎)
テレビ長崎