シリアのアサド政権が崩壊、ウクライナやアジアにも動き 世界に新たな混沌か新秩序か 根っこはトランプ氏の存在に帰着
【日本の解き方】 シリアのバッシャール・アサド政権が8日、転覆した。反政府組織HTS(ハヤト・タハリール・シャム)は、イスラエルがイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」を制圧してレバノンが停戦した11月27日の翌日から攻勢を開始し、わずか11日で政権を崩壊させた。アサド大統領はモスクワ亡命を余儀なくされた。 【写真】壊れたアサド大統領の父、故ハフェズ・アサド大統領の像を踏む反体制派の戦闘員 首都ダマスカスでも主要都市ホムスでもほとんど戦闘がなく、アサド政権はあっさりと負けた。 HTSは国連のほか、米国やトルコなどの政府からテロ組織に指定されている。しかし〝勝てば官軍〟でもある。今後、反府組織が政権側になると、どうなるだろうか。 それにしても、なぜこのような事態となったのか。 元々アサド政権の軍は弱かったという指摘が多い。それをイランとロシアでサポートしてもたせていた。 しかし、イスラエルがレバノンで、イランが支援するヒズボラを徹底的に攻撃し続けたことで、イランは痛手を受けた。 また、イスラエルはイランの軍幹部をシリア国内で次々に攻撃した。イスラエルによる大攻勢がイランの余力を奪い、シリアでの今回の事態に大きく影響したと考えられる。 ロシアもウクライナ戦争で手いっぱいで、シリアまで手が回らなかった。来年1月20日、ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に就任するが、ウクライナの領土はそのときの現状で固定される公算が大きい。それまでロシアとウクライナはできるだけ支配地域を拡大しようとしのぎを削っており、シリアまで面倒を見切れなかったというのが実情だ。 こうした状況を見ていた反政府組織が一気にシリアを制圧したわけだ。いずれもトランプ政権の誕生を見越したものであるが、思わぬ波及効果がシリアにあったと見てもいいだろう。 アサド政権の崩壊は、ロシアの威信にとって打撃だ。これまでロシアの軍事援助と引き換えに、シリア当局はフメイミムの空軍基地とタルトゥースの海軍基地を49年間使用する権利をロシアに与えた。ロシアによる地中海東部の橋頭堡(きょうとうほ)となっていたが、新政権で維持されるのか不透明だ。 新政権が再び混沌をもたらすのか、新たな秩序をもたらすのか、今の時点でははっきりしない。