羽賀研二容疑者「強制執行妨害等」で逮捕だが…当初報じられた容疑「公正証書原本不実記載等罪」はどこへ?【弁護士解説】
字面のイメージと実際の行為が異なる「公正証書原本不実記載等罪」とは
公正証書原本不実記載等罪は、対象となる行為がどのようなものか、イメージしにくい犯罪かもしれない。「不実記載」という文言からは、自身の手で真実に反する記載をするかのような印象を受ける。 しかし、公正証書の原本は公務員が職務上作成するものなので、それに私人が自ら記載することはあり得ない。実際の犯罪行為は、「公務員に対して虚偽の申し立てをして、公正証書の原本に不実の記載(電磁的記録の場合は不実の記録)をさせること」をさす。 つまり、犯行は、公務員に対して虚偽の申し立てをした時点で完了する。そして、公務員が虚偽の内容を公正証書の原本に記載・記録することによって、犯罪は完成し「既遂」になる。 なお、公務員が虚偽に気付いて記載・記録をしなかった場合でも「未遂罪」に問われる。 犯行の対象となる公正証書原本の種類や、犯罪に該当する典型的な例はどのようなものか。刑事法全般に詳しい岡本裕明弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。 岡本弁護士:「公正証書原本不実記載等罪の対象となる公正証書原本は『権利または義務に関する公正証書の原本』です。『謄本』などは含まれません。 公務員が職務上作成し、権利義務に関する事実を証明する効力をもつ文書をいいます(最高裁昭和36年(1961年)6月20日判決参照) 刑法157条1項には『登記簿』『戸籍簿』が例示されていますが、その他にも、土地台帳、住民票、外国人登録原票といったものが含まれます。それらの内容が記録された電子ファイルも対象です。 本件で問題となっている不動産に関する虚偽登記のほか、自動車の所有者が『自動車登録ファイル』に別人名義で新規登録や移転登録を行うケースがあります。 『住民票』については、実際に居住していない場所に住民登録をするケースが該当します。 『戸籍簿』については、配偶者の同意を得ずに勝手に離婚届けを出す行為や、離婚の意思もないのに離婚届けを出す『偽装離婚』などがあたります。 他にも、同族会社などで、株主総会などによる意思決定がないのに、会社の役員の選任・解任の登記を行うケースも、罰せられる可能性があります」 これらの中には、罪の意識が乏しいままに犯してしまう可能性があるものも含まれるので、重々注意しなければならないだろう。