Jリーグ再開は無観客想定も突きつけられた新たな難題
6月が厳しいと判断されれば、再開目標も自動的に7月、8月と1カ月単位でずれ込んでいく。日本サッカー協会(JFA)が主催する天皇杯全日本サッカー選手権の大会方式変更が23日夜に発表され、JクラブからはJ1の2チームのみが出場し、残る54チームは不参加となった。 異例の措置は言うまでもなくリーグ戦を成立させるためのものであり、8月の再開となればYBCルヴァンカップの大会方式も大幅に変更されると村井チェアマンは明言した。ただ、すべては新型コロナウイルスの終息次第であり、予断を許さない状況がこれからも続いていくことは間違いない。 おりしもJ2アルビレックス新潟の是永大輔代表取締役社長(43)が、トップチームが活動休止に入った今月17日に緊急出演した地元のテレビ番組で、クラブの倒産に言及したことが大きな波紋を呼んだ。リーグ戦が中断され、クラブとして何も対策が講じられない状況が続けば「9月から10月ぐらいにキャッシュがなくなります」と、資金繰りがショートする見通しであると明言した。 これは資金を集めることが自分の役割であると宣言することが目的であり、心配したファンやサポーターから自身のツイッター(@_kore_)に寄せられたリプライには「すみません。煽るつもりはないのですが、このまま自然体で進むとそうなります、という話です」と返信している。実際、その後に新規スポンサー1社の獲得と、既存のスポンサー3社の継続を是永社長は報告している。 もっとも、公式戦の再開へ向けた視界がいっこうに良好とならない状況で、J1にも長く在籍したアルビレックスから発せられた「倒産」の二文字は、衝撃を伴うあまり、是永社長の意図に反してどうしても独り歩きする。自宅待機中の選手たちの間へ、「不安」へと形を変えて広まる恐れもある。 日本のサッカー界を取り巻く状況が、わずか数カ月で激変してしまったからこそ、ヨーロッパのクラブに倣った体制作りが「非常に重要な視点になる」と、村井チェアマンも受け止めている。 「スペインリーグの知見で言えば、クラブには心理学を専門とする、いわゆるフィジカルとは別の心の専門家を必ず擁している。Jリーグでも心の相談を問い合わせることができるような、独立した窓口を設けることをJFAの医学委員会と連携しながら対応していきたい」 午後には予定になかった、全56クラブの代表取締役や理事長らで構成される実行委員会をウェブ会議方式で緊急開催。6月以降に公式戦が再開されるときには、当初は「最後の手段」と慎重に位置づけていた無観客試合の開催を、シミュレーションのなかに入れていく方向性を共有した。 「非常事態宣言下では、無観客を含めて試合開催は難しいという認識でいます。宣言が解除される、もしくは段階的に解除されていく場合は、まずは無観客試合が妥当というご指摘をいただきましたが、選手やスタッフが移動する際のリスクなどを十分に考慮すれば、無観客だからすぐに試合ができる、という簡単なものでもないとも認識しています」 社会全体の情勢の変化を見ながら、サッカー界が一丸となって進めていく準備のなかに選手たちの心のケアも加えながら、目に見えない未知の敵との戦いは新たなステージへと突入していく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)