高校年代のラグビー競技人口が20年で半減。「主チーム」と「副チーム」で活動できる新たな制度は起爆剤となれるのか?
スポーツをする人権が高校から失われている
岩渕専務理事も「規程の変更だけで環境が改善するわけではない。さまざまに活躍できる機会を作っていかなければいけない」と課題山積であることを認める。 今後着手されるべきは、各地でクラブの数を増やし、かつクラブが活躍できる場を広げることだと徳増氏は言う。 「少子化のためにラグビーをする子が少なくなったと言われますが、それぞれにラグビーができない事情があるんです。(いまのラグビー界は)日本の高校のラグビー選手のニーズに答えられていない。本当の受け皿がないのです。 いまの高校生には、楽しいことがいっぱいある。『ラグビーも楽しみたいけど、ラグビーだけではない』という価値観を受け入れる柔軟性が必要になってくるんじゃないかと思います。 日本協会は参加するのが2~3チームになるとしてもクラブの大会を作るべき。鶏が先か、卵が先かではありませんが、まず大会があればチームは増えてくる」 クラブのプレゼンスを上げられるよう手を打てば、競技人口の減少や二極化という問題もずいぶんと解消されるのではないかと徳増氏は話す。少なくともコルツでは、ハイレベル志向とエンジョイ志向という「二極化」の両極にいそうな選手が共存している。既存のシステムのもとではラグビーをやめてもおかしくなかった学生がラグビーを続けているという事実が、そこにはある。 今回の二重登録の仕組みにおいて、「主」が高校、「副」がクラブを前提とされることにも、徳増氏は異を唱える。 「本来なら、(高校とクラブの)どちらを『主』にするかは本人が選べるようにしなくてはいけません」 家庭の事情で進学が難しい若者の存在も加味してか、こうも言及する。 「いまのルールでは、全国高校大会の予選に出るには(ラグビー部のある)高校に入らなくてはならない。中卒で働いている人やラグビー部のない夜間高校の生徒は、クラブには加われますが、(高体連の行う全国大会関連の)大会には出られないのです。スポーツをする人権が高校から失われているともいえます」 ちなみに徳増氏は元茗溪学園ラグビー部監督。昭和最後の全国高校ラグビー大会で決勝中止に伴う同時優勝を果たした実績を持ち、これまでの高体連の貢献度には最大級の敬意を払う。あくまで時代に即した新案として、今度の話をしてくれた。 「高校の先生も我々も、やっていることはラグビーの普及です。その場所が高校であろうが、クラブであろうがいい。そういう大らかな気持ちがないといけない」 <了>
文=向風見也