高校年代のラグビー競技人口が20年で半減。「主チーム」と「副チーム」で活動できる新たな制度は起爆剤となれるのか?
高校生年代におけるラグビー人口の減少は深刻だ。その大きな理由の一つとして少子化の加速によって高校生自体の数が減っていることが挙げられるが、サッカーやバスケットボールといった他競技に比べてラグビーの競技人口減少はより顕著だ。ではそこにはどのような問題が横たわり、日本ラグビーフットボール協会や現場の指導者たちはどのような打ち手を考えているのか? (文=向風見也、写真=アフロスポーツ)
20年で競技人口が半減。加えて生じる「二極化」問題
ブームの追い風が効いていない。ここ数年、高校のラグビー部やラグビーをする高校生の数はどんどん少なくなっている。 全国高等学校体育連盟(高体連)によると、前年度の高校のラグビー部の数とその部員数はそれぞれ「863」「17037」。20年前にあたる2003年度の「1252」「30419」より激減している。競技人口に至っては、約半分に減っている。 その間には2015、2019年のワールドカップで日本代表が結果を残し、競技認知度を爆発的に高めている。それでも、五郎丸歩や松島幸太朗のようになりたい少年少女の層、ないしはその受け皿は広がっていないのである。 折からの少子化で各競技のプレーヤーは増えない向きにあるが、ひときわ打撃を受けているのがラグビーだと指摘される。 加えて、高校ラグビー界で起きているさらなる問題に「二極化」がある。 15対15という大人数での団体競技なうえ、身体衝突もあって個体差が生じやすい。そんな競技特性もあってか、中学までに腕に覚えのある人が行きたい学校はいくつかの強豪校に絞られがちだ。 競技人口の総数が目減りしているいまもその潮流が続くからか、全国行きを争う名門が大所帯となる一方、単独で公式大会に出られないチームが全国で続出している。
「主チーム」と「副チーム」で活動できる新たな制度
「二極化」問題で生じるのは、二つのデメリットだ。 一つは一定の競技力のある選手がレベルの高い所属先でレギュラーを取れず、公式戦の経験を積めないというケースが生じやすいこと。もう一つは、エリートクラスではない立ち位置でこのスポーツを楽しみたい人のための環境が見つけづらくなることだ。 そのひずみは、トップカテゴリーへも少なからぬ影響を与える。 1980年代から1990年代に大学選手権で優勝を争っていた強豪大学の指導経験者は、このように指摘する。 「昔は強豪校のエースがよそに取られても、都道府県予選の1、2回戦で負けるチームにもずば抜けた『お山の大将』みたいな選手がいて、そういった選手を集めてチームが作れた。いま現場に立つ指導者は、それがやりづらくなっているのではないか」 この問題は看過できない。統括団体の日本ラグビーフットボール協会(日本協会)は、きっとそう思ったのだろう。 2024年4月1日より、同協会規約にある「チーム登録等に関する規程」の 「第3章 チーム登録等の手続 第12条の2(複数登録の禁止)」に例外規程を設けた。 従来は男子高校生の選手が二つのチームに登録できないことになっていたが、公式大会に出られる「主チーム」のほか、出場できるゲームに制限のある「副チーム」を登録できる。 例えば、在籍する高校のラグビー部を「主チーム」、学校の垣根を取り払った各地域のクラブチームを「副チーム」として活動できるわけだ。登録上のクラブの定義も「満18歳以上で構成されたチーム」だったのが「15歳以上(中学生未満はのぞく)」に見直された。 これなら「所属チームは変えたくないが、そのチームのメンバーが少ないため大人数で練習する場所が欲しい」など、さまざまなケースに対処できそうだ。