増加傾向にある議員の「素人化」は大丈夫か
■「プロ議員」否定の動き もちろん、新人議員がそのまま「未熟な議員」と言えるわけではありません。最初はだれもが「新人」です。しかし、日本では議員になるには秘書から「修行」して、当選後は同じ党や会派の先輩議員に見習う「徒弟制度」のような仕組みが確立されていきました。議員が「プロ」として育つ半面、党議拘束や議席の固定化が進み、議会が形骸化(けいがいか)していくという弊害も指摘されるようになりました。 そうした「プロ議員」のあり方を否定する動きも出てきました。その急先鋒が名古屋市の河村たかし市長です。河村市長は国会議員時代から「議員の職業化はいかん」と訴え続け、名古屋市長になっても現職市議に大幅な報酬削減などを求め、激しく対立してきました。 2010年には自ら代表となって地域政党「減税日本」を設立。報酬削減をめぐって仕掛けた議会のリコールで成立した11年3月の市議選には、僧侶や大学院生など、政治の未経験者をかき集めて公認候補として送り込み、28人を当選させて第1党に躍進。いわば「素人議員」を増やして議会の腐敗やしがらみを断ち切ろうという狙いでした。 ■不祥事続きで立て直しへ ところが、ふたを開ければ減税日本の議員自身が不祥事続き。政務費の不適切処理はもちろん、公費でマンガを買ったり、視察に女性を同行させたりしていた議員は車で「当て逃げ」の容疑までかけられたにもかかわらず、「おれほど議員の資質がある男はいない」などと言い張って議員辞職を否定しました。この議員は減税日本を除名はされましたが、いまだに1人会派として議員にとどまっています。 嫌気のさした減税議員らが次々と会派を離脱。母体の減税日本ナゴヤは今や15人にまで減り、第2党に転落してしまいました。減税日本関係者は「既存の『談合政治』にどこまで対抗できるかという実験だったが、個人の能力や資質が低かったことは否めない。資質の審査はしていたが、審査員がしっかりしていなかった」と反省の弁も口にし、来年の統一選に向けて態勢の立て直しを図っています。 元減税日本の市議は「野々村議員の場合は名古屋と比べて兵庫の議会事務局のチェックが甘すぎたと感じる。しかし、先輩議員の指導がなければ会計処理などの勝手が分からないことも確かで、今後は無所属議員にも基礎的な教育システムがあってもいいのでは」と提言します。 名古屋、東京、兵庫…。市民の期待を立て続けに裏切った代償はあまりに大きいものがあります。来年までに立て直しはできるでしょうか。 (関口威人/Newzdrive)