【LiLiCoのこの映画、埋もらさせちゃダメ!】悲しい宿命を背負ったひとりの女性を追ったドキュメンタリーとして観てほしい『オードリー・ヘプバーン』
TV『王様のブランチ』で2001年から映画コメンテーターとして出演するほか、マルチに活躍されているLiLiCoさん。これまでも数々の映画をナビゲートしてきたLiLiCoさんに、「これは絶対に観逃してほしくない!」という“埋もらせ厳禁”な映画について語っていただきます。 【全ての画像】悲しい宿命を背負ったひとりの女性を追ったドキュメンタリーとして観てほしい『オードリー・ヘプバーン』
華やかなイメージの彼女しか知らないという方にはぜひ!
GWが終わった後も、注目してほしい作品が続々公開されています。たとえば『流浪の月』とか。主演の松坂桃李さんと広瀬すずさんがすごいことは言うまでもないんですが、この作品で一番の驚きは横浜流星さん! いや、ほんと。これまで見たことがないくらいにクズ男を見事に演じていて、今年の映画賞を総なめするんじゃないかってレベルですよ。 でも、もっと埋もれてしまいそうな作品があるので、ふたつご紹介します。ひとつは『オードリー・ヘプバーン』。言わずとしれた大スター、オードリーの素顔に迫ったドキュメンタリー映画です。 皆さんがご存知のオードリーは、初主演作『ローマの休日』で演じたアン王女役でアカデミー賞主演女優賞を受賞し、またたく間にハリウッドの大スターになり、世界中の人々から愛されて華麗な人生を送った人。特に日本では彼女のことは神格化されていますよね。でも、彼女の素顔はけっしてそのイメージどおりではなかったことが描かれています。 第二次世界大戦下、ナチス占領下のオランダで育った彼女。実は、父親がナチスに傾倒し、家族を捨ててイギリスの極右になっていた、という事実が明かされます。父に愛されなかったというトラウマを抱えたまま、バレエダンサーとしてのキャリアを積み、俳優として小さい役をこなす日々。 そんなとき、『ローマの休日』のオーディションであの役をつかみます。そこで名声を手にしますが、彼女が求めていたのは違うもの。そう、愛情だったんです。 彼女と同時期に活躍したマリリン・モンローもそうでしたが、とにかく男運がなかったんですね……。俳優として仕事をしながら、愛する人と結婚するも裏切られ。しかも、待ち焦がれていた実父との再会を果たすも、父からは全く求められていなかった現実をつきつけられて、さらに彼女は手に入らない“愛情”を求めるようになります。 それが最初の夫と2番目の夫との間に生まれたふたりの息子。彼女は育児を優先し、自分が得ることがなかった愛を、自分から差し出し続けることで満たされていったんです。俳優を続けることは彼女にとって簡単なことだったはずなのに、第一線を退いてまで育児、そしてユニセフの仕事に身を捧げた理由がこの作品で分かると思います。 大女優の伝記ドキュメンタリー、というよりも、悲しい宿命を背負ったひとりの女性を追ったドキュメンタリーとして観ていただきたいですね。特に華やかなイメージの彼女しか知らないという方にはぜひ。