日本メディアのナンセンス…トランプ外交最重要ポイントは南北アメリカ!日本人が知らない「米国第一主義」の本当のニュアンス
米大統領選挙は共和党ドナルド・トランプ元大統領の勝利で終わった。もともと拮抗しているいわれた民主党カマラ・ハリス現副大統領との闘いであったが、ふたを開けてみればトランプの圧勝であった。さて、トランプは一体どんなアメリカを目指すのだろうか。それに伴い日本は何をすることになるのだろうか。我々の生活はどう変化していくのか。アメリカの政治情勢に詳しい国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が全3回にわたって解説していく。第2回は外交政策についてだーー。
「アメリカファースト」と「単一執行府論」
第二次トランプ政権の外交安全保障政策のキーパーソンが出揃ってきた。現在、役職に指名されていない一部のメンバーもホワイトハウスなどで重用される可能性があるものの、現時点でのおおよそ方向性は明らかになっている。 今回のトランプ政権の外交安全保障体制の特徴は「アメリカファースト」と「単一執行府論」の観点から特徴付けられる。そして、この2つの概念はトランプ大統領の外交安全保障政策の車の両輪として機能していくことになるだろう。 第一の特徴である「アメリカファースト」について手始めに説明していこう。アメリカファーストは非常に多義的な概念である。「アメリカの利益を第一とする」と言われても、そもそも当たり前の話でしかない。したがって、この概念を改め確認することは非常に有益だ。 「〇〇ファースト」は、ある何かよりも別の何かを優先する、ということを意味する。そこで本稿では、アメリカファーストとは「様々なグローバルな課題よりもアメリカの国民の利益を優先すること」と定義する。そうしてみると、トランプ氏が指名したキーパーソンとの政策的なリンクがより明確なものとなる。
日本のメディアのナンセンス
たとえば、国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員を見てみよう。彼は日本のメディアでは対中強硬派として紹介されているが、そのような説明は非常にナンセンスなものだ。なぜなら、現在の共和党には国務長官人事で対中強硬派以外の人物を選ぶことはあり得ないからだ。したがって、この人事の本質はルビオ氏の対中強硬派以外の部分から考えるべきである。 ルビオ氏はキューバから社会主義を嫌ってフロリダに避難したヒスパニックの一族の一員である。したがって、彼は中南米の左派政権に対して非常に厳しい立場を取っている。そして、現在、多くの中南米の国家は左派政権が樹立しており、米国は自らの庭である同地域での主導権を失っている。ルビオ氏に課せられた使命はアメリカの裏庭における反米・非米勢力の一掃であろう。トランプ氏が最初にあった人物がアルゼンチンの右派勢力であるミレイ大統領であったことは偶然ではない。そのため、ルビオ人事とミレイ面談はトランプ政権が南北アメリカ大陸を重要視しているメッセージと捉えるべきだ。