コメの直播栽培で省力化 離農が進む北海道で注力
生産者の減少や高齢化に直面する日本農業にあって、省力化は必須だ。解決策の一つに、水田に直接、コメの種子を播(ま)く直播栽培があり、生産面積の広い北海道ではホクレンが中心となり、道内の将来的な水田面積維持を目指し、積極的に取り組んでいる。 専用品種として、冷凍ピラフに向く「大地の星」、寿司用途で炊飯ベンダーに人気の「ほしまる」を経て、「えみまる」が誕生。低温苗立ち性が従来品種より大幅に上回ることから、安定生産が得られ、しかも「ななつぼし」並みの良食味を兼備する。 直播栽培は、水田に苗を植える従来の方法より春先の作業が6割以上軽減される。面積が大きくなるほど育苗と田植え作業の負担が大きくなるため、低コスト・省力効果が期待できる。近年、高齢化による離農が進む中で担い手に農地が集積、生産面積の急増を機に取り組む生産者が増えているという。 ホクレンでは、えみまるの生産面積を、2019年産500ヘクタールに対し、2020年産は1300ヘクタールまで大幅に増加させている。米穀事業本部米穀部主食課の遊佐友広課長は「栽培技術の確立と、何より生産者の努力が欠かせない」とする。 25年前から、地域一帯となって直播栽培に取り組んできた妹背牛町直播研究会の会長を務める熊谷勝さんは、「当初は天候により収量が左右されたが、機械利用組合を設立し、補助金を活用し組合員が共同で使う機器を導入し、地道にノウハウを積み重ねていった。田植機1台だと適期に終わらせるためには、18~20ヘクタールが限界。わが家は23ヘクタールあり、直播きを取り入れなくては田植えが長引き、稲が老化してしまう。2020年産は『えみまる』4.3ヘクタール、『ほしまる』1.9ヘクタールを作付けた」と話す。 4年前、生産面積が増えたことを機に、直播きに取組み始めた旭川市の田中靖啓さんは「面積拡大の切り札。播種作業が1人ででき、人件費もかからない。しかも多収だ。取組み当初は失敗を繰り返し、JAに相談しながら試行錯誤を繰り返した。2018年産の北海道の作況は『90』と不作だったが、収量は通常の栽培より高く、成果が得られるようになった」とする。 一方、ホクレンではえみまるの販売に注力し、幅広い需要確保を目指している。業務用では、例えば、大手コンビニ中心とした米飯惣菜原料用としての販売を視野に準備を進める一方で、道内スーパーで一部、北海道米の新たな品種としてテスト販売をスタート(5月)。値頃感があるとして好評を得、販売は好調。2020年産新米から道外での引き合いが多く来ているという。 ※日本食糧新聞の2020年9月28日号の「コメビジネス最前線特集」から一部抜粋しました。
日本食糧新聞社