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サーモンのマーマレード焼き、辛くない麻婆豆腐……タサン志麻の絶品おかずを作ってみた

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リアルサウンド

 「志麻さんのごはんが食べたい」。ある日、私の胃袋がつぶやいた。テレビで仮面ライダー1号こと藤岡弘、さん宅にて料理する伝説の家政婦・タサン志麻さんを見たときのことだ。しかし、メディアで引っ張りだこの志麻さんを、おいそれとウチに呼ぶわけには行かないだろう。 【写真】キーマカレーなどの写真  それなら、と手にしたのがこの『いつもの食材が三ツ星級のおいしさに 志麻さんのベストおかず 』(扶桑社)だ。  サブタイトルに輝く「三ツ星」の文字は、プロフィールを読めば納得。家政婦として独立する前の志麻さんは、大阪あべの・辻調理師専門学校と同フランス校で学び、ミシュランの三ツ星レストランでの研修を経て、日本のフランス料理店で腕をふるうプロの料理人だったのだ。  家政婦として独立してからは、フレンチの世界で得たテクニックを取り入れた料理が評判を呼び、伝説の家政婦の異名を取る。出版された著書は軒並みベストセラーとなり、テレビに出演すれば高視聴率をマーク。いまやカリスマ的存在となった志麻さんは、家政婦やフランス料理という枠組みを飛び出して、誰でもおいしく料理が作れるノウハウを、メディアで発信し続けている。 ■気になる難易度は……?  「フレンチ」「三ツ星」というキーワードから、ふだんの自炊料理とはかけ離れた別世界を連想してしまうのは、私だけだろうか。  しかし、本書で紹介されるレシピはいたってカジュアル。肩肘張らずに作れるフランス料理から、ショウガ焼きや肉じゃがにメンチカツと、「日本のおかず」と呼ぶにふさわしいメニューまでが並ぶ。  登場する調味料も、和食はしょう油・みりん・だし。洋食は塩胡椒・コンソメ・オリーブオイル。中華ならニンニク・ショウガ・ごま油が基本と、我が台所とおんなじ世界。例えば、外国料理を作ろうと張り切って買ってはみたものの、調味料棚で永遠の眠りについた挙句カチコチに固まりがちな珍しいスパイスなどは、この本には出てこない。  肉や魚・加工品などの食材も知った顔ばかり。難易度は全体的に低く、しかめっ面で料理しなくて済みそうだ。そう思ったら、「三ツ星」に対する心のハードルがガタンと下り、フっと肩の力が抜けた。ついでにお腹のベルトもゆるめつつ、『志麻さんのベストおかず』から家族三人前の食事を作ってみた。 ■呼べぬなら、作ってみよう「キーマカレー」  使い慣れたいつものカレールウに惚れ直してしまったのが、この「キーマカレー」。  使われる調味料は、たったひとかけの固形ルウとケチャップのみという潔さ。しかも文字通りすぐに出来る。試しにストップウォッチを起動してみたら、玉ねぎを切り始めてからものの8分30秒で完成してしまった。のっけた素揚げ野菜も同時進行でジリジリと揚げ焼きにしたのみ。残ったらホットサンドの具にしようという目論見は見事にはずれ、おかわり上等の完売御礼となった。 ■読者アンケートNo.1「コンソメトマト煮」  本書の第1章「超簡単&絶品BESTレシピ」では、生活情報誌『ESSE』に掲載され、読者アンケートで支持されたレシピがランキング形式で10位まで紹介されている。  第1位に輝くこの「コンソメトマト煮」は、切った食材をボンボン鍋に入れ、トマト缶・コンソメ・水で煮たらハイ完成。これ以上、省く手順を思いつけないほど超簡単なレシピだ。  水の計量ひとつ取っても、空いたトマト缶を利用するから実に手間いらず。調理もほとんど鍋まかせで、時間がおいしくしてくれるのをひたすらに待つ30分間、のんびりできたのが有難い。  トマト煮にさつまいもという組み合わせはかなり新鮮に思えたが、オンザライスにすると洋風さつまいもごはんとも言える洒落た味わいに。安い豚コマ肉も、真っ赤な舞台で誇らしそうに主役を張る。  くたびれ果てた金曜の夜、楽してごちそうが味わえ、胃も心もリセットできた。 ■4位は子どものツボを突いた「辛くない麻婆豆腐」  小学生の子どもがいる我が家では、辛さに気をつかう。市販のカレーならかろうじて中辛がいける口だが、豆板醤や花椒を使う本格中華料理を食卓に出すのは、まだまだ気が引ける。しかし、このレシピには救われた。味噌・醤油・砂糖のシンプル配合に、ニラ・にんにく・ごま油からなる香りの御三家が絡んで、特別なスパイスなしに香り高いマイルド麻婆豆腐が楽しめるのだ。  砂糖の甘さの後にくるしょっぱさが娘のツボを突いたようで、気づいたら麻婆豆腐ライスに仕立ててワシワシとかき込んでいる。「おいしい」には言葉がいらないときがあるようだ。 ■ジャムはごはんに合うのか?「サーモンのマーマレード焼き」  焼き魚の友には真っ先に白ごはんを挙げたいが、はたして、ごはんにマーマレードジャムは合うのか?  5位にランクインした「サーモンのマーマレード焼き」は、そんな野暮な心配をよそに「意外と京風」「柚子味噌を彷彿とさせる」と、家族から驚きと賞賛の声を集めた。  気がかりだったマーマレードの甘さはなりを潜め、代わりに柑橘系の爽やかな香りが生魚の臭みを消し去る。ジャムならではのつややかな照りも食欲をそそる。  いつも朝のパンにペッタリと塗られるだけの運命だったマーマレードが、味噌や魚とこんなに合うなんて。ごはんも無事に進んで、めでたし、めでたし。 ■焼きナスのミルフィーユが絶品!「ムサカ」  10位をマークした「ムサカ」は、野菜とミートソースを重ね焼きにした地中海地方の名物家庭料理だ。しかし、いざ作ろうとなると普通はミートソースづくりから手をつけねばならない。  かたや、志麻さん版ムサカはザク切りのトマトがオーブンの中で挽き肉と合流し、そのままソースに変身してしまう魔法のようなほったらかしレシピなのだ。  オーブンから取り出し、どれどれ?とベイク皿の中を探ってみると、ミルフィーユ状に重ねた焼きナスがこんにちは。じっくり加熱され、とろんと眠たそうにまどろんでいる。その上にトマトミート軍団が優しく覆いかぶさる。  垂直にカットし、全ての層をひとくちに頬張ると、塩気の効いたソースをまとったナスがとろんととろけて、ああ至福の秋ナスよ。一瞬、ずっと秋がいいとさえ思ってしまった。 ■ソースも絶品「豚肉とジャガイモの重ね焼き」  普段は家族の好みも考慮はするが、自分の好み一発で料理するのは何よりも楽しいし、やる気も出るし、おいしい。そこで本書の最終章「超かんたん!三ツ星レストラン風 おもてなしレシピ」からは、自分をもてなすべく「豚肉とジャガイモの重ね焼き」を作ってみた。  こちらも下ごしらえした材料をどんどん重ねてオーブンに入れて焼くだけの、お気楽レシピである。  蒸し焼きにされた豚ローストンカツ用肉とジャガイモが、ソテーとはまた違うふっくらした食感に仕上がり、ほっぺたが落ちそうになる。具材から旨味が滲み出たコンソメベースのソースも絶品で、ちぎっては浸しながら食べていたらパンが足りなくなってしまったほど。  そこでふと舌の記憶が呼び覚まされた。昔フランスで食べた家庭料理「豚肉のシャンバロン風」を思い起こさせるのだ。日本ではよそゆきのレストランでしかお目にかかれないと思っていたが、実は気取らずに作れる、おうちフレンチにピッタリの一品だった。 ■簡単&おいしい料理で、日本の台所を楽しく、楽にしてくれる一冊  本書には、100種類に及ぶレシピの他にも簡単においしく料理するための基本のコツやヒントがすみずみに散りばめられており、作れば作るほど、志麻さんがプロの世界で得た知識やテクニックが自然と読者の身に付く構成になっている。きっと料理初心者からプロはだしの向きまで、気構えることなくレパートリーを増やせる一冊となるだろう。  私自身も志麻さんレシピと付き合って1週間、毎日気楽に献立づくりを楽しめた。自炊ざんまいでアイディアに詰まりがちな今日この頃ではそれだけでもう三ツ星。これからも、献立がマンネリしてきたら志麻さんに教わろう。いつか家に呼んでみたいな、という壮大な夢は持ち続けつつ。

大信トモコ

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