沖縄を襲った大雨と突風…要因は積乱雲だった 難しい予測、警戒どうすれば…? カギは「雷注意報」
沖縄地方は5月4日の梅雨入り後、急な大雨や突風が相次いだ。事前の予測が難しい二つの気象現象は、どちらも積乱雲が要因。県内の5月の平均降水量が平年比で3倍と非常に多かったことで、冠水や土砂崩れなどの被害が相次いだ。専門家によると、梅雨明け後も積乱雲による激しい雨の可能性がある。台風シーズンに向け、日頃から気象情報に警戒することが必要と呼びかけている。(社会部・東江郁香) 【写真】「ゴー」と音が移動 宮古島で竜巻か ホテル敷地のトレーラーハウス全壊 ■最多雨量 5月の沖縄地方は、昨年11月から続くラニーニャ現象の影響で(1)梅雨前線が停滞しやすい(2)南西方向からの暖かく湿った空気が前線に向かって流れ込みやすい(3)太平洋高気圧の張り出しが強い-状況だった。 雨を降らせる水蒸気が常にある状態で、積乱雲が活発に発達。1946年の統計開始以来、5月として最多雨量となった。 本島地方は5月31日、6月3日の大雨が冠水や土砂崩れなどを引き起こした。専門家は、断続的な強い雨で被害が相次いだとみる。 ■突風発生 宮古島地方で1時間に最大50ミリ以上の雨が降った5月の23日と28日には、突風が発生。トレーラーハウス全壊などの被害があった。 気象台は28日の突風は竜巻の可能性があると判断。23日の突風は特定に至っていない。 突風には、積乱雲に伴う上昇気流で発生する竜巻や、積乱雲からの下降気流が地上に衝突するダウンバーストなどがある。地形や条件に規則性はなく、台風のように事前予測することが非常に難しいという。 県内では2018年9月、台風の影響で竜巻とみられる突風が名護市で発生し、計4人が負傷した。 ■多い竜巻 気象庁によると、沖縄は全国と比べて竜巻の発生数が多い。1991年から2017年に確認された発生数は、北海道の47件に次ぐ43件だった。 竜巻は、内陸部より海岸付近で確認されることが多い。周囲を海に囲まれた沖縄は他府県に比べて発生しやすいという。 予測が難しい急な大雨や突風だが、要因は積乱雲。積乱雲の下では急な大雨や突風のほか、落雷が発生する恐れがある。 どう対策すればいいのか。気象台によると「雷注意報」の発令が積乱雲警戒の目安になるという。雷注意報は、雷や竜巻が発生する数時間前から発表される。積乱雲の発達は県内どこでも起こり得るとし「命を守る行動を心がけてほしい」と呼びかけている。 梅雨明け後も大雨の可能性 ■山田広幸琉球大学教授(気象学)の話 積乱雲は、数分程度で急激に発達する。そのため、積乱雲が起きやすい状況は分かるが、いつどこで発達するのか予測することは非常に難しい。さらに、一定の位置で集中して発達するか、散らばって発達するかも予想できないので、被害予測もできない。 5月以降の沖縄地方は、大気が不安定な状態が続いている。地上付近の暖かい空気と上空の冷たい空気のバランスが崩れ、積乱雲が発達しやすくなった。 特に5月下旬からは、積乱雲が列をなして大雨を降らせる線状降水帯のような構造だった。 沖縄にとって、九州での豪雨被害は対岸の火事ではない。 梅雨が明けた後も急な大雨に見舞われる可能性がある。日頃からハザードマップや気象情報を確認し、危険を感じたらすぐに避難することが重要だ。