マルハナバチ 外来種が75% 在来種普及進まず 授粉効果の浸透課題
トマトやナスなど、施設野菜の授粉に使うマルハナバチのうち、特定外来生物のセイヨウオオマルハナバチが利用面積で全体の4分の3を占めることが農水省の調べで分かった。在来種と競合し、生態系への悪影響が懸念されている。一方、政府が導入を推進する在来種のクロマルハナバチは4分の1にとどまる。授粉効果などを十分浸透させ、施設野菜農家に転換をどう促すかが課題だ。 マルハナバチの利用面積は2018年で3310ヘクタール。このうち、セイヨウオオマルハナバチが2487ヘクタール(75%)、クロマルハナバチは823ヘクタール(25%)だった。 セイヨウオオマルハナバチを授粉に使う時は環境省の許可が必要で、その許可基準は厳しくなっている。19年からは継続以外の新規の飼養を許可せず、飼養数を増やす場合は理由書などの添付が必要になった。22年4月からは飼養数の増加も認めない方針だ。 政府は、クロマルハナバチへの転換を促している。クロマルハナバチの利用面積は16年から18年の間に242ヘクタール(41%)増えたが、セイヨウオオマルハナバチは同2%減と、ほぼ横ばいで推移している。 在来種保護のため、政府はセイヨウオオマルハナバチの 15年時点の年間出荷量約6万箱を、20年には半減させる目標を設定している。だが、外来生物を所管する環境省は、現状のペースで 目標達成は難しいと見通す。 クロマルハナバチの販売価格は、セイヨウオオマルハナバチと同水準。それでも転換が進まない要因として、クロマルハナバチの授粉効果などが農家に十分浸透していないことが挙げられる。 そこで農水省は、クロマルハナバチの導入・定着を支援。農家グループを対象に、巣箱代や肥料、農薬、被覆資材などの経費を助成する。周辺地域に普及させることを前提に、各グループで飼育マニュアルも策定。これまで10グループが対象となり、21年度以降も事業を続ける予定だ。 農水省は「セイヨウオオマルハナバチと比べても、授粉効果に遜色はない。各地の取り組みを通じ、クロマルハナバチへの転換を引き続き促していきたい」(園芸作物課)と話す。
日本農業新聞