米先住民で初の閣僚となったハーランド氏 連邦議員も先住民女性で初だった、その歴史的出来事の背景
先日、バイデン政権の内務長官に、下院議員のデブ・ハーランド氏が就任した。米国で初の先住民の閣僚だ。 【写真】存続危ういアマゾン先住民、美しい日常 撮影秘話 実は彼女は、2018年に先住民女性で初の連邦議員となった人物でもある。当選直後に取り上げた当時のナショジオの記事から、彼女の人となりと、内務長官として期待される背景に迫ってみよう。 ◇ ◇ ◇ 2018年の米中間選挙で起きた歴史的な出来事の一つは、連邦議会で初めて先住民女性議員が誕生したことだ。 元ニューメキシコ州民主党会長でラグナ・プエブロ族のデブ・ハーランド氏が下院に当選したほか、カンザス州でもホーチャンク族の弁護士シャリス・デービッズ氏が共和党のケビン・ヨーダー議員を破り、下院に当選した。 ネイティブアメリカンの人々についてのニュースを扱うオンラインニュースサイト「Indian Country Today」の編集者マーク・トラハント氏は、2人の勝利が歴史に与える影響について、どれだけ大げさな言葉を並べても言い足りないと話す。1789年以降に誕生した連邦議員約1万2000人のうち、先住民の血を引く議員は300人ほどだが、その中に女性は一人も含まれていなかった。 「国民の代表たちの議論の中に、アメリカ先住民がいなくてはなりません。その重要性を、先住民のコミュニティーは理解するでしょう」 ■怒りが女性の台頭を後押し 2018年の中間選挙は女性たちにとっても歴史的な選挙となった。下院選挙では、新人31人、現職65人、合計で96人の女性議員が生まれた。ミシガン州とミネソタ州では、史上初のムスリム女性議員が誕生した。民主党のラシダ・タリーブ氏、民主農民労働党のイルハン・オマル氏だ。 こうした劇的な選挙結果の背景には、セクシャルハラスメント問題や女性の声を抑え込んできた権力構造について、全米が再考を迫られているということがある。「#MeToo」運動から、性的暴行疑惑が浮かび上がった連邦最高裁判事ブレット・カバノー氏の公聴会まで、怒りが政界における女性の台頭を後押しした。 カンザス州から下院議員になるデービッズ氏は弁護士であるだけでなく、同性愛者であること、格闘家であることを公言している。今回の選挙では、LGBTQ(性的少数者)の候補者も複数当選した。 ハーランド氏とデービッズ氏の勝利は先住民にとって、政治への完全参加を勝ち取るまでの長い道のりの象徴でもある。米国政府がすべての先住民に市民権を与えたのは1924年。ハーランド氏の地元であるニューメキシコ州が先住民に選挙権を認めたのは1962年で、50州のうち最後だった。