10月の自殺者が前年より約4割増加 年前半は低水準だったのになぜ?
年前半は著しく低い水準で推移してきた自殺者数が、ここにきて増加する兆しを見せています。背景には新型コロナウイルスによる生活環境や雇用環境の変化があると考えられます。生活困窮者などに対する支援を充実させる必要があるでしょう。
警察庁の統計をもとに厚生労働省が取りまとめた2020年10月の自殺者数が大幅に増加し、前年同月比39.9%増の2153人となりました(速報値)。今年は新型コロナウイルスの感染が拡大し、経済が極めて大きな打撃を受けたにもかかわらず、1~6月まで自殺者は例年よりも大幅に少なく推移してきました。ところが7月以降、自殺者数の増加が目立つようになり、10月には前年の同じ月と比べ一気に614人も増える結果となりました。 今年の前半は緊急事態宣言が発令され、世の中の動きが一時的ではありますが、ほぼ止まった状態となりました。政府は紆余曲折があったもののパニック的な倒産や解雇やそれに伴う生活困窮者の急増を回避するため、一律10万円の特別定額給付金を支給したほか、雇用調整助成金や主に中小事業者を対象とした持続化給付金など、各種支援策を実施しました。一連の支援策の効果は大きく、結果として年前半の自殺者数は例年よりも低く推移しました。 しかしながらこうした支援策はいつまでも継続できるものではありません。外食や旅行などの業界を中心に、今でも事業の縮小や撤退などが続いています。企業も長期的な景気見通しの悪さから、組織のスリム化を進めており、水面下では雇用環境が悪化していると考えられます。仮に目先の危機に対処できても、長期的な見通しが立たない場合、人によっては精神的にかなり追い詰められてしまいます。 大人と同様、子どもの自殺も増えています。親の経済状況が悪化したケースも考えられますが、休校などによって子どもの生活環境が変わり、これが精神的な負担を大きくしている可能性もあります。 11月に入って感染者数は再び増加傾向となっており、あくまで可能性の話ではありますが、西村康稔(やすとし)経済再生担当相は、感染増加を抑えられなければ「緊急事態宣言が視野に入ってくる」との見解を示しました。11月以降、感染再拡大が顕著となりつつあり、年末から年度末にかけて雇用環境がさらに悪化する可能性もあります。生活困窮者に対する直接的な支援はもちろんのこと、労働者や子どもの精神的なケアについても何らかの対策が必要となりそうです。 (The Capital Tribune Japan)