北村匠海×井上祐貴が語る、友情と恋愛と青春「恋は盲目と言うけれど、その盲目さも悪くはない」
若者たちの等身大の青春&恋愛を描いた映画「明け方の若者たち」。主演を務めた北村匠海は、飲み会で出会った“彼女”(黒島結菜)と恋に落ちる“僕”を演じ、理想と現実の間でもがく主人公の葛藤を体現。そして、その“僕”の友達で、2人の恋を見守る尚人を井上祐貴が演じている。 【写真を見る】北村匠海×井上祐貴、撮り下ろし写真9枚 ■「今回は深いことを考えずとも“僕”になれた」 ――自身が演じた役柄について、どう思いましたか? 北村:“僕”という人間は、自分に近い感覚がありました。本人はフラットに生きていると思っているけれど、“彼女”との関係に加え、社会に出てからも絶望を感じていたりして、そういう人間くさい浮き沈みがあるところにシンパシーを感じました。だから、今回は深いことを考えずとも“僕”になれた気がします。 井上:僕が演じた尚人は強そうに見えて、本当はもろくて弱い人。社会人になる前に思い描いていた理想と現実にギャップがあって、それに苦しんでいる若者だと感じました。最初は“僕”とは対照的な人間に見えるかもしれませんが、根本的なところでは同じだと思います。 ■「友人はみんな自分にはないものを持っている人ばかり」 ――“僕”にとっての尚人は、会社の同期というだけでなく、“彼女”のことを唯一相談できる親友でもあります。 北村:自分の友人関係を振り返ってみても、自分と似ているタイプはあまりいなくて。みんな自分にはないものを持っている人ばかりなので、“僕”と尚人も自分にないものを補い合っている関係なのかなと思いました。あとはやっぱり志が一緒だったから仲良くなれたんでしょうね。 井上:印刷会社に入社したばかりの頃は、“渋谷をジャックするぞ”と、2人で意気込んでましたからね(笑)。学生時代に出会っていたら、あそこまで仲良くなっていなかったかもしれないけれど、社会人として目指しているところに共通点があったから、より分かり合えたんだと思います。 ――描かれるのは、“僕”が“彼女”と出会ってからの5年間。「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」という“彼女”からのショートメールで始まった2人の恋は、青春そのもの。しかし、後半にはある事実が明かされ、驚きの展開を見せていきますね。 北村:もし自分にあのショートメールが送られてきたら、“あざとい!”と感じてしまうと思います(笑)。そもそも2人が出会う場所も(就職先が内定した)“勝ち組”飲み会という名称で、僕だったらまずそこでドン引きしていると思う(笑)。ただ、“僕”もその飲み会には退屈しているので、そんなショートメールを送ってくる“彼女”のことを面白そうだと感じたのは分かる気がします。 井上:でも、ちょっとズルいですよね。その後、ほとんど恋に落ちかけている“僕”に対して、“彼女”が「もうちょっと押してくれたら、いいかも?」と言うシーンがあるじゃないですか。あれは本当にズルいと思う(笑)。物語の後半で明かされる“ある事情”を知ってから見たら、“僕”の「朝まで一緒にいてくれませんか?」というセリフがものすごく悲しく切なく響いてきますよね。 ■「匠海くんのカッコ良さを感じました!」 北村:それは本当にそうで、“彼女”はズルいし、“僕”はつらいよね。だからこそ“僕”は「俺といたら、きっと楽しいよ」と言ったんだと思うけど、そう言うしかなかったんだと思います。もし僕が“僕”であっても、多分そう言っていると思う。 井上:そう言うしかない、というのは切ないですよね。でも、それが自分だったらと考えると…。いや、それでも「俺といたら~」とは言えないかも。自分で言うのも変かもしれませんが、僕はシャイな性格なので、そんな状況でも「また!」とかでごまかしている気がします(笑)。 北村:多分“僕”としても、その言葉を言ったのは最大のカッコつけだったんじゃないかな。だからこそ、それしか出てこなかったんだと思う。 井上:そう考えると、もう切なさしかないですよね。“僕”の場合は消去法でその言葉を選んだのかもしれないけれど、今の話を聞いて、匠海くんのカッコ良さを感じました! 北村:恋は盲目と言うけれど、僕はその盲目さも悪くはないと思っていて。ただ、このまま“彼女”との関係を続けると、自分が傷つくと分かっていながらも、自分だけはそうならないと信じようとするのは、ある意味、“僕”の弱さなのかなと。僕自身もそうでしたが、そんな彼らの青春や恋愛に対するもがき、葛藤に共感してくださる方も多いのではないかと思います。ぜひ、皆さんの“あの頃”を思い出し、映画を楽しんでいただけるとうれしいです。 取材・文=馬場英美