情報流出の県警前生活安全部長 在職時に警察庁へ「告発文」
鹿児島放送
鹿児島県警の不祥事を巡って新たな事実が分かりました。捜査情報を流出させたとして、国家公務員法違反(守秘義務)に問われている県警の前の生活安全部長が、在職時に、全国の警察を指揮監督する警察庁の内部通報窓口に宛てて告発文を送っていたことが分かりました。 この事件は、県警の前の生活安全部長本田尚志被告(61)が退職後に、県警の不祥事を告発する目的で、捜査情報が記載された文書を北海道の月刊誌記者に送付したとして、国家公務員法違反の容疑で逮捕されたものです。 本田被告は6月5日の勾留理由開示公判で、「野川明輝・県警本部長(当時)が不祥事を隠蔽しようとした。いち警察官としてどうしても許せなかった」と主張。 その後、この文書に公表を望んでいないストーカー被害者の氏名が記載されていたとして、国家公務員法違反の罪で鹿児島地裁に起訴されています。 本田被告が逮捕容疑前に行った警察庁への告発が結果的に受け入れられず警察内部による是正が期待できないと判断して、外部のメディアに不祥事の情報を流出させた可能性が出てきました。 県警幹部など複数の関係者によりますと、告発文は今年1月下旬に鹿児島市内の郵便局から発送され、九州管区警察局長が鹿児島県警を巡視する際、管区側と県警側の懇親会が計画されていると訴える内容でした。 以前に管区警察局が管内の警察本部を監察した際、管区警察局の幹部と警察本部幹部との間で開かれた懇親会が中立性の観点から問題になったことを指摘した上で、1月に発生した能登半島地震の復興支援で、県警職員が車中泊に耐えながら職務に当たっていると主張。 こうした状況のなかで安易な懇親会の開催は控えるべきだとして、警察庁に指導を求める内容でした。差出人には、井上昌一・前刑事部長の名前が書かれていました。 県警関係者によりますと、当時は能登半島地震による被災者への弔意と被災地に派遣された県警職員への敬意から、県警内部では新年会などを自粛し、酒席の予定をキャンセルしたケースもあったということです。 本田被告はこの告発による効果がなかったことから、退職後に行った不祥事の告発先として北海道の月刊誌記者を選んだとみられます。 【早稲田大学 教育・総合科学学術院 澤 康臣教授】 「懇親会が適切だったか不適切だったかという判断は別として、本田さんから見ると、これはおかしいと思ったことを通報した。この通報制度自体に強い不信感を持ち、これはもう無駄だと。これでは公益通報は機能しないという判断に至り、警察庁ではない別の窓口、具体的に言えばメディアとか、今度は方向を転換せざるを得なかったという流れだった可能性は十分に考えられる」 本田被告が前刑事部長の名前を使った点については 【早稲田大学 教育・総合科学学術院 澤 康臣教授】 「仮に(告発が)偽名であったとしても、(警察庁は)内容の確認ぐらいはしておくべきだったのではないかなと。逆に、これで井上さんの名誉が本当に落ちるのか、評価が落ちるのか。名誉を傷つけたいという計算に裏打ちされた行為とまでは言えないのではないかなと」 県警は9月の会見で、本田被告が逮捕された容疑以外にも、前刑事部長の名前で文書を送っていたと明らかにしましたが、送付時期や宛先のほか、その内容も明かしていませんでした。 県警はKKBの取材に対し「裁判に支障が出る恐れがあるため、答えられない」としています。 一方、県警幹部など複数の関係者は告発文の存在と内容を認めています。