同性愛者を受け入れる先住民の村 コロンビア
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【1月16日 AFP】南米コロンビアのアマゾン(Amazon)熱帯雨林にある先住民の村で育ったジュニオール・サンガマ(Junior Sangama)さん(27)は、自分が同性愛者であることをずっと隠して生きてきた。家族と対立し、出て行くことを選んだものの、結局、地元に戻って来た。ナザレ(Nazareth)は、1000人ほどが農業と手工芸で生計を立てる非常に保守的な村だが、サンガマさんを含め、約20人の同性愛者がここで居場所を見つけている。 ナザレでは以前は、性的少数者(LGBT)が排除されていた。しかしこの20年ほど、首長らは同性愛者に対する残酷な罰をやめ、サンガマさん、サウル・オラルテ(Saul Olarte)さん(33)、ニルソン・シルバ(Nilson Silva)さん(23)らを条件付きで受け入れてきた。 先住民の世界では、共同体で暮らす権利を得ることが極めて重要だ。そのため、サンガマさんらは自分たちで一定のルールを設けた。人前でキスをしない、同居もしない。一方で、地元の昔からの風習を守る役割を引き受け、お香をたきながら亀の甲羅をたたく音と共に始まる伝統的な舞踏を披露している。 故郷に戻って来たサンガマさんら3人が慎重に振る舞うことにしたのは、チクナ(Tikuna)の人々が同性愛者にどのような仕打ちをしてきたかを知っていたからだ。 チクナの評議会の広報を担当するアレクス・マセード(Alex Macedo)氏(40)によると、この地の言い伝えでは、キアリの一種にかまれた人は「考えを改め、(肉体的に)タフになって生まれ変わる」と信じられ、アリに同性愛者の体をかませることもあった。「男らしさ」を調べるとして、同性愛者に土地を耕作させ、カヌーを造らせることもあったが、マセード氏によると、こうした罰が与えられることもなくなった。 ■いつか共同体の中で家庭を築ける日が来るはず 21世紀になってから、「共同体の中で、どのような差別も行わない」とする動きがあり、以来ナザレは、他の先住民の村からやって来たLGBTの人々にとって、自分らしく生きられる場所になっている。 マセード氏は、LGBTの若者たちは「先住民の文化、特に言語を保護するために」必要な存在と判断されたのだと説明した。 アマゾンの先住民の多くの村は、性の多様性を認めているわけではなく、完全に受け入れているわけでもないが、暴力を振るうことなく対処してきたと、性的少数者の権利擁護団体、アファーマティブ・カリビアン・コーポレーション(Affirmative Caribbean Corporation)の代表、ウィルソン・カスタネダ(Wilson Castaneda)氏は言う。 オープンなLGBTコミュニティーは地元の指導者らに受け入れられないであろうことを考えれば、ナザレはその典型的な例だ。 今のように緩やかな集まりなら許されるが、とマセード氏は話し、「集団をつくることは許されないだろう」と続けた。 しかし、さらに先を見据えているサンガマさんは、いつか自分たちが「パートナーを持ち、共同体の中で堂々と家庭を築き、本当の自分を自由に表現できる」日が来るはずだと語った。 映像は2020年11月に取材したもの。(c)AFPBB News