Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

ロヒンギャへの差別悪化…現政権に失望「でも軍よりまし」 揺れる1票

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
西日本新聞

ミャンマー総選挙開始

 【バンコク川合秀紀】11月8日投票のミャンマー総選挙は8日、各党の選挙運動が始まった。2015年の前回選挙はアウン・サン・スー・チー氏率いる政党が圧勝し、軍主導の政治に終止符を打った。しかし、不法移民として長年差別されるイスラム教徒少数民族ロヒンギャの問題は、スー・チー政権下でむしろ悪化し、国際社会の非難を浴びる。翻弄(ほんろう)され続けるロヒンギャは今回の総選挙をどう見ているのか。 【写真】スーチー氏、国際法廷でロヒンギャ虐殺否定  ミャンマーが歴史的な政権交代に沸いた15年11月、遠く離れたタイで歓喜したロヒンギャは少なくない。バンコク近郊、パトゥムタニ県で製氷業を営むイスマイルさん(52)もその一人。スー・チー氏らの勝利を知り、こう信じた。「これで私たちの人権を取り戻せる」  ミャンマー西部、ラカイン州ブティドン出身。軍事政権下の1988年、帰国したスー・チー氏を中心に全土に広がった民主化運動に参加し、当局との衝突時に前歯を折った。90年総選挙では、同氏率いる国民民主連盟(NLD)に投票。NLDが圧勝したが、軍政は選挙結果を無視し民主派弾圧を強めた。イスマイルさんは約25年前にタイへ逃れた後も、スー・チー氏とNLDを応援しながらロヒンギャへの差別解消と国籍付与を訴え続けた。  「ともに国軍と闘ってきた仲間」と思っていたスー・チー氏。だが新政権が誕生しても動かなかった。17年8月には、ラカイン州でロヒンギャ武装勢力と当局の大規模衝突が起き、ロヒンギャ70万人以上が隣国バングラデシュなどに難民として流出。政府は帰還を促すが、国連などが批判する「ジェノサイド(民族大量虐殺)」を認めず国籍も与えない状態が続くため、帰還は進まない。5年前の歓喜と期待は色あせた。「裏切られたということ。怒りというより悲しい」  今回の総選挙ではごく少数のロヒンギャが立候補する予定だが、国民の大半が仏教徒の上、文化や言語が異なるロヒンギャへの差別意識は根強い。ロヒンギャ問題の対応を公約に掲げる政党はNLDを含め、ほとんどないのが現状だ。  一方で国会議員の25%は軍人枠に当てられ、非常事態時は国軍が全権を持つ仕組みもあるため、国軍の政治関与はなお色濃い。今回の選挙もNLD優勢とみられるが、もし議席を大きく減らせば国軍の影響力がさらに強まり、ロヒンギャの復権も一層遠のくとイスマイルさんは感じている。  前回選挙の在外者投票でイスマイルさんや仲間の多くはNLDに票を投じたが、今回は「どこに投票するか、みんな悩んでいる」と明かす。「希望はほとんどないが、軍よりNLDがまし」。そう話したかと思うと「投票に行かないかもしれない」とこぼした。厳しい現実とかすかな期待のはざまで言葉は揺れ動いた。

西日本新聞

【関連記事】