写真は時代の証明 時代の顔を撮り続けたい ── 写真家・加納典明が語る
数多くの女優やタレントの写真を撮ってきた加納典明氏に、これまで手がけた作品の撮影裏話や、写真界の現状と未来について話を聞いた。
内田裕也さんにハドソン川をスーツのままで泳いでもらった
──いままでで最も印象に残っている撮影はなんですか? まず、内田裕也さんが出演したパルコのCM(1985年)ですね。ニューヨークのハドソン川を裕也さんにスーツ姿のままで泳いでもらったんです。あの撮影は、当時みんな「クレイジー」だって言っていましたが、才能あふれるコピーライターやアートディレクターなんか第一線を牽引していた優秀なスタッフで、最高のものをつくりました。非常に大掛かりな撮影で、とにかく思い出のある撮影でした。 ほかには、僕の名前を冠にした雑誌「月刊 THE TENMEI」の仕事ですね。雑誌なんだけど、広告ページはほとんどなくて、ヌードモデルばかりを撮影した。たしか当時、定価580円位で、月に公称80万部を売っていました。広告ナシで、しかも出せば必ず売れるので知人からは「金を刷っているようなもんだな」なんていわれたもんです。 いまでも伝説的な数字としては当時を知る人から言われますね。ドンドン売れるもんだから、出版社の人が撮影場所も、撮影予算もいくらでも使っていいから好きにやりなさいと言うわけですよ。そういわれると当時みんなノーテンキに飛行機はファーストクラスだホテルもスイートだって。(笑)行く先によっては、ホテルの場所によっては2棟くらい借りて、プール付、メイド付きという最高に贅沢な環境でしたね。10日行くなら、撮影はせいぜい5日。あとはゴルフして遊んでましたよ。 あの時、浮かれてないでもっと自分自身の作品を撮ればよかったな・・・。いまさら反省しても仕方ないけど、もったいない時間もあったなと思います。日本一贅沢なロケをしたフォトグラファーかもしれませんね。でも、当時この雑誌は年間20億以上売り上げたでしょうね。とにかく売れた雑誌でしたね。来日中のシュワルツネッガーが本屋で3冊買って行ったとか、ある中国人はまとめて20冊買って行ったなんて話も僕の耳に入ってきました(笑)。