デフォルトの瀬戸際に追い込まれる中国不動産大手の碧桂園:恒大は理財商品がデフォルト
恒大の理財商品がデフォルト
他方、恒大集団は8月31日に、手元資金不足のため8月の理財商品(投資信託の一種である資産運用商品)の支払いができなかった、と投資家に通告した。不動産価格下落の影響もあり、資産処分が進捗していないことが深刻な資金不足を生んでいる。2021年にも恒大は、400億元(約8,020億円)相当の理財商品の償還ができず、全国規模の抗議行動が巻き起こった。 同社は8月末に予定していたドル建て、香港ドル建て債の再編を巡る債権者との会合を延期している。長引く経営再建プロセスの先行きは、さらに不透明となってきた。
深まる中国シャドーバンキング(影の銀行)の問題
中国の不動産不況は、金融セクターに波及し始めている。現在、その中心にあるのが、銀行ではない金融機関・商品、「シャドーバンキング(影の銀行)」である(コラム「深まる中国シャドーバンキング(影の銀行)の問題」、2023年8月18日)。 中国最大級の資産運用会社の一つである中植企業集団の傘下にある、信託会社・中融が組成した高利回りの信託商品でデフォルトが生じたと、顧客3社が8月11日に明らかにした。中融は中国で9番目に大きな信託会社である。 そして、今回恒大は再び理財商品のデフォルトを起こした。より一般国民に浸透している、いわば本丸の理財商品にも不動産不況の影響が再び及んできているのである。こうしたシャドーバンキングの問題は、資金ひっ迫傾向を助長し、それが経済や不動産市場のさらなる悪化をもたらすという悪循環を生みやすい。 2021年の恒大問題の表面化から2年以上が経過し、不動産市場は再び悪化の度を強めている。中国経済は2年前と比べても脆弱性を高めており、不動産分野の問題は、中国経済と金融分野により大きな影響を与える可能性が高まっている。 (参考資料) 「碧桂園、元建て社債保有者の投票期限また延長-現地9月1日午後10時」、2023年8月31日、ブルームバーグ 「中国恒大、理財商品の支払いできず-資産処分進まず手元資金不足」、2023年8月31日、ブルームバーグ 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英