Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

大城立裕「カクテル・パーティー」 日米親善の欺まんを暴く【あの名作その時代シリーズ】

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
西日本新聞
大城立裕「カクテル・パーティー」 日米親善の欺まんを暴く【あの名作その時代シリーズ】

フェンスと鉄条網に守られた米軍住宅。広々とした芝生に並ぶ一戸建て住宅は老朽化し無人のものも多い=沖縄県宜野湾市

 「あの名作その時代」は、九州を舞台とした作品、または九州人が書いた著作で、次代に残すべき100冊を選び、著者像や時代背景、今日的な意味を考えながら紹介するシリーズです。西日本新聞で「九州の100冊」(2006~08年)として連載したもので、この記事は06年6月18日付のものです。 **********  オオグスクからオオシロへ。「大和的」な読み方で呼ばれだしたのは、中学校に上がった昭和十三年前後のころだったろうか。「日本人らしくなれ」。学校の先生は、そう教育する一方で、「沖縄の言葉を忘れるな」と説いた。  戦前、沖縄県最後の県費留学生として、中国・上海にあった東亜同文書院に学んだ。「日中の架け橋」になるはずだった。  在学中、日本軍に服務したことがある。現地の農民から食糧を調達する「軍米収売」という現場で警備に就いた。銃剣を持って農家に入り、泣いて訴える農民からなけなしの食糧を巻き上げる兵隊たち。五族協和。八紘(はつこう)一宇…。美名の陰の現実を見た。  終戦の報には開放感を感じた。敗戦の悔しさはなかった。  終戦後間もなく、上海の映画館に行った。上映前、国民党(当時)の党歌がかかり、中国人の観客が全員起立して合唱した。その途端、全く突然に涙があふれ出した。  自分は一体、何者なのか。  常にアイデンティティーが揺れていた。    ■   ■  ―主人公の「私」は、米軍基地内でのパーティーに招かれる。本土復帰前の沖縄。基地に出入りできる特権的な沖縄人として「選ばれた楽しみを感じる私」。まさにその時間、事件が起きていた。娘が米軍人の男にレイプされるが、男に大けがを負わせ逆に逮捕されてしまう。  アメリカと日本。日本と沖縄。戦勝国と、占領軍と、被占領民と…。個人のレベルをはるかに越えた重層の狭間(はざま)で、男を告訴しようと奔走する主人公は、自分が本当は何を告発しようとしているのかを意識する。  物語は後半、突如、語り手が変わる。「娘はなんのためにお前の二十年前の罪をあがなって…」「お前は息をつめて、娘の全身の形をみつめ…」  二人称の「お前」の発する言葉が、突き刺すように読者に放たれる。    ■   ■  「七、八年越しの作品だった」と大城立裕氏はいう。  「米軍政下で虐げられる沖縄。頭の中に漠としたイメージはあったけど、そんな単純な、センチメンタルなテーマでは小説にならない、と思ったんです」「向こうから問い掛けられたらどうしようか。『お前たちだって中国でレイプしたじゃないか』と。主人公に『過去』を背負わせ、その『過去』とどう向き合うか。そのテーマがひらめいたことで、単純な抵抗文学にならずにすんだんです」

本文:2,266文字

写真:1

    続きをお読みいただくには、記事の購入が必要です。

    すでに購入済みの方はログインしてください。

    税込220
    PayPay残高
    T-POINT
    使えます
    サービスの概要を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。購入後に記事が表示されない場合はページを再度読み込んでください購入した記事は購入履歴で読むことができます。

    西日本新聞

    西日本新聞の有料記事

    PayPay残高使えます