「まだどっかで自分に期待している」 挫折も借金も踏み越えて、ムロツヨシ&劇団ひとりのイバラ道
「役者を目指すって最初は楽しいけど……」柄本明の教え
ともに駆け出し時代は苦労した。ひとりは、お笑いコンビ「スープレックス」で6年活動したが、同業者に実力を認められるも鳴かず飛ばず。事務所ライブのアンケート投票では最下位もザラ。アルバイトも長続きせず、パチンコにのめり込んだ。2000年にコンビは解散。ピン芸人の道を余儀なくされた。 ムロは、劇団「ヤニーズ」を立ち上げるもメンバーとの温度差が生じて脱退。その後、役者としての経験値を積むためにお笑いライブに出演するなど 試行錯誤の時期もあった。 ムロ:無名の役者として小劇場で活動していた頃、自分が決めた目標は何一つ叶ってなくて。でも周りはどんどん就職して車を買い、家庭を持ち始め……。「みんなで集まろう」となった時に、嘘ついて行かなかった時ありますもんね。 ひとり:俺もやったわぁ。同窓会行けなかった、恥ずかしくて。仕事ないくせに「ごめん、俺仕事だわ」とか言って。芸人は地方営業があるから、ちょっと深夜番組に出てればあとは営業で小遣い稼ぎをできるんですよ。
でも役者は、がんばりようがないというか。まず“受け”から入るじゃないですか。「この役、お前ね」って言われて、渡された台本に「(首を傾げ)う~ん」っていう場合も多々あるだろうし。 ムロ:柄本明さんに言われたのが、「役者を目指すって最初は楽しいけど、いずれ努力の仕方がないことに気づく」ってこと。たとえば肉体を鍛えようと思ったら、過酷なトレーニングを課せば理想の体に近づくし、筋肉痛に耐える喜びもある。けど、「いい芝居をしようとする訓練」は、自分の中で探すしかない。さらに、「“経済的に困る”という一番苦しい時間をどう過ごしていくかだ」ってことも教わりましたね。 ひとり:僕は当時、病的に「リセット願望」があった。お笑い芸人なのにテレビを捨てて、服も5着ぐらい残してあとは捨てて。携帯電話の番号さえ変えて、誰とも連絡つかない状態。でも、生活は何も変わらなかった。 結局、すぐテレビ買いましたしね(笑)。物を捨てたからって人生変わらないですよ。精神的に良くなかった、あの時期は。