スティーブ・ジョブズ流リーダーシップを現代の職場で実行するには
スティーブ・ジョブズは、早すぎる死を迎えるまで、忘れがたい発言を数多く残しました。 私が好きな彼の名言の1つは、人事管理術に関するものです。ジョブズは、リーダーとして完璧とは言えなかったとはいえ、チームの背中を押して最高の力を発揮させたことは間違いありません。 ジョブズの頭には、物事が簡単に運ぶようにしようとか、みんなと仲良くしようといったことは存在していませんでした。 それよりも、高い目標を設定すること、社員の意欲をかき立てて、彼らを創造と革新の新たな高みへと到達させることにこそ、大きな価値を見出していたのです。 とはいえ、そうした姿勢は、今日のリーダーにとって何を意味するのでしょうか? 劣悪な労働環境を生み出すことなく、チームにはっぱをかけるには、どうすればいいのでしょうか? その答えは、ジョブズが2008年3月に『フォーチュン』誌のインタビューで語った名言のなかにあります。 私の仕事は、人々に対して親しみやすくあることではありません。 私の仕事は彼らの能力を高めることなのです。
「限界以上」を引き出すマネジメント
ジョブズは、自身のチームが居心地よく感じられるようにしたいとは思っていませんでした。 社員が「これが自分の限界だ」と思っていたレベルを超えられるよう背中を押すことが、自分の役割だと考えていました。 ジョブズが目指していたのは、社員に好かれることや、和やかな職場環境をつくることではなく、基準を極限まで高めて、社員が最高の自分になれるよう力を貸すことだったのです。 チームに対して高い期待値を設定することで、革新を促進させる可能性があります。 しかし同時に、うまくやらないと燃え尽きにつながるおそれもあります。リーダーは、チームの意欲をかき立てなければなりません。しかし、社員に対して、さらに良くあるよう求めることと、彼らがやる気を完全になくす劣悪な環境を生み出すことの差は紙一重です。 ジョブズはリーダーとして、社員に厳しい要求を突きつけました。そうした姿勢はうまくいけば、並外れた素晴らしい結果へとつながります。 しかし、ジョブズのスタイルを実践しつつ、部下に転職を考えさせないようにするには、どうすればいいのでしょうか? 重要と思われる要点をいくつかまとめました。 目的を明確にする:部下は、はっぱをかけられている理由をきちんと理解する必要があります。目的が明確で、難題を与えられるのは自分が成長するためであることが明らかであれば、部下は実力を発揮する可能性が高くなるでしょう。 十分にサポートする:高いレベルを期待するのは必要なことですが、リーダーはチームの成功を助けるべく、ツールやリソース、ガイダンスを与えなければなりません。厳しい要求を突き付けておきながら何のサポートもしなければ、信頼が損なわれる可能性があります。 フィードバックの文化をつくる:率直なフィードバックを定期的に提供することで、部下は、自分の強みや改善すべき点を理解しやすくなります。それによって成長が促され、課題に直面したときに不意打ちのように感じることはないでしょう。 野心的な目標設定を推奨する:背伸びしなければ達成できないような目標を設定することで、部下は、コンフォートゾーンを飛び出そうというやる気を起こします。ただし、野心的な目標と言っても、適切に努力すれば達成できるものであるべきです。敗北感ではなく達成感が感じられる仕事であるべきです。 進歩を評価する:能力を高められるよう部下にはっぱをかけることは大切ですが、彼らの進歩を認め、評価することも大切です。そうすることで、高い士気を維持できますし、さらに上を目指そうという意欲をかき立てることができます。 要求水準が高く、それへ向かってひたすら突き進むジョブズのリーダーシップ・スタイルについての究極の答えは、「バランス」のなかに存在します。 たしかに成長とはしばしば、難題に直面して頑張ること、場合によっては、自分が限界だと考える範囲を超えて努力することからやってきます。 しかし、こうした哲学を現代の職場にうまく応用するためのカギは、高い期待をかけつつ、サポートや尊重、共感、社員のウェルビーイングとバランスをとることにあります。 こうした微妙なバランスをとれる人こそ、リーダーシップと呼ばれる複雑極まりない術をマスターする人なのです。 Source: Fortune Originally published by Inc. [原文] Copyright © 2024 Mansueto Ventures LLC.
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