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お疲れさまでした「ガム先生」 地域の子を愛し、愛され44年 惜しまれながら閉院

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琉球新報

 44年間、地域の子どもたちの健康を見守ってきた沖縄県那覇市牧志の宮城小児科医院が5月30日、宮城英雅院長(81)の高齢を理由に閉院した。診察後に子どもにガムをあげることから「ガム先生」の愛称で慕われた宮城さん。親子2代、3代でお世話になった患者もいる。最終日には地域の人々約100人が訪れ、「お疲れさま」と感謝した。  祖父や父も医師だったという宮城さんは自然に医師を志した。東京医科歯科大学を卒業してロンドン大にも留学。沖縄の日本復帰前後には琉球政府の那覇保健所所長などを歴任し、公衆衛生の向上に努めた。「患者と一対一で健康教育に取り組みたい」と思い、1976年に医院を開業した。  ガムをあげるようになったのはひょんなことがきっかけだ。開業したての頃、隣にあったパチンコ店で大当たり。全部ガムに交換して子どもたちにあげた。だがガムがなくなったある日、診察を済ませた子が宮城さんに向かって手を出した。慌てて近くの店でガムを買って来たが、その子だけでは済まなかった。「みんながガムをもらえると思って大失敗だった」と笑う。  周囲の保育園の嘱託医なども務め、診察室の壁は子どもたちから贈られた似顔絵や手紙でいっぱいだ。沖映通り商店街振興組合理事長として街おこしにも尽力した。80歳を過ぎ、物忘れが増えてきたといい「しっかりしているうちにけじめをつけよう」と今年の正月に引退を決意した。  最終日、宮城さんはいつものように子どもたちと向き合った。予防接種を怖がり泣く子に「泣かなくなる注射もあるよ。やってみる?」と優しく語り掛け、ベテランの技でさっと注射を済ませる。診察が終わるとさりげなくガムを渡す。  閉院の時間が近づくと、医院の前の道はこれまでお世話になった人たちであふれた。宮城さんに「医院が閉まっている時間も救急で開けて助けてくれた」「家族の健康は先生のおかげ」と次々に感謝し、花束を贈った。子どもらと一緒に感謝の言葉を伝えた平川麻衣子さん(34)は「夫も小さい時から通っているので、先生は自分のおじいちゃんのような存在。頼りにしていたのにさみしい」と閉院を惜しんだ。  宮城さんは「44年間お騒がせしました」とユーモラスにあいさつしたが、感極まって言葉を詰まらせた。「こんなに多くの人が来てくれるとは思わなかった。患者さんにいろんなことを教わった。いい商売だなと思いました」  引退後は妻の満寿子さん(77)と旅行をしてゆっくり過ごす予定だ。宮城さんが「(これまでかまうことができず)悪かったね。君のおかげで続けてこられた」といたわると、満寿子さんも目に涙を浮かべ「長いことお疲れさまでした」と返した。

琉球新報社

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