縄文時代に学ぶ(10月8日)
動物の骨や角を加工した道具に編みかご、土器、土偶など、その数約740点。南相馬市内の遺跡204カ所のうち47カ所から出土した。市博物館の縄文時代をテーマにした企画展で、来月24日まで紹介されている▼狩猟・採集が盛んな時代背景を考えると、遺跡のある場所は、自然の恵みが豊かだったに違いない。かごに入ったクルミ、釣り針、斧[おの]の材料になったシカの角、イノシシの牙などから、山海の恵みを生かした暮らしがうかがえる▼石器の素材の多くは山形県産だった。道具に向いた石がなく、物々交換によって手に入れていたという。塩づくりが海岸近くで営まれ、内陸地域との交易に役立てられたとの説もある。研究者によると、縄文人の生活圏は集落のほぼ半径5キロ以内だったが、交易や婚姻によって、遠方とも積極的に行き来していたようだ▼獲物を狙ったさまざまな道具は作り出しても、人に向ける武器はほとんど見つかっていない。1万6千年前から1万年以上も続いた縄文時代は、大がかりな戦いの跡もない。自然と交流、そして平和を尊ぶいにしえの息遣いに企画展で触れてみる。太古の浜の先人が伝える人類の優しいルーツに、心が和む。<2024・10・8>