“学級崩壊”状態のトランプ政権 「ロシアゲート」で疑惑報道相次ぐ
「弾劾」案に共和党はどう対応するのか
やはり最大の関心はトランプ大統領が弾劾されるか否かであろう。ただ、大統領弾劾には幾つかのステップが必要だ。 まず、第一に、「司法妨害」の立証である。コミー氏の議会証言、あるいはコミー氏が残したとされるトランプ氏との会談メモだけでは弱い。ただ、今回はダニエル・コーツ国家情報長官(DNI)やマイク・ロジャース国家安全保障局(NSA)局長など、情報機関の幹部にもトランプ氏が疑惑否定を要請したと報じられている。こうした関係者の証言が積み重なり、かつ関係書類(メモやテープ、通信記録など)が召喚されてゆけば、十分、刑事訴追の可能性は出てくる。「司法妨害」は重罪であり、合衆国憲法の定めるところの大統領弾劾の対象となり得る。 ただ、ウォーターゲート事件当時と異なるのは、今回、議会の上下両院の多数派をトランプ氏と同じ共和党が占めている点だ(ニクソン政権時代は両院とも野党・民主党が多数派)。弾劾には下院の過半数、上院の3分の2の賛成票が必要とされる。つまり、共和党側から相当数の離反者が必要だ(現在の議席数は、下院が共和党241・民主党194、上院が共和党52・民主党48)。 現時点では、これはかなりハードルが高い。トランプ氏の全米支持率は約40%と低迷しているが、共和党員の間では80%以上と、依然、すこぶる高い。多くの共和党議員の本音としては、トランプ氏が退き、マイク・ペンス副大統領が昇格する方がより望ましいのかもしれないが、熱心なトランプ支持者からの反発を考えると離反のリスクは高い。中間選挙で同じ党内から刺客を擁立される事態は何としても避けたいところだ。 それよりは、むしろ「ロシア・ゲート」に関する捜査は可能な限りFBIや特別検察官に委ね、停滞している重要案件(オバマケア見直し、税制改革、規制緩和など)を着実に進め、来秋の中間選挙までに具体的な実績作りに励む方が政治的に得策と考えるだろう。 もちろん、それは今後の捜査の進展状況次第でもある。疑惑が一層深まり、人事や予算をめぐる民主党の抵抗が増し、法案審議が止まることになれば、結果的に「統治能力のない共和党」というイメージが広がる。そうした事態になれば、さすがにトランプ氏からの離反ムードが高まるかも知れない。自党の大統領の弾劾が争点になるようでは、中間選挙はとても戦えたものではない。