“学級崩壊”状態のトランプ政権 「ロシアゲート」で疑惑報道相次ぐ
米国のトランプ政権とロシアとの不透明な関係が疑われています。米メディアでは「ウォーターゲート」事件を文字って「ロシアゲート」と呼ばれるこの疑惑のきっかけは、昨年の大統領選にロシアがサイバー攻撃で介入していたのではないかなどとされる問題でした。発足から4か月以上がたつトランプ政権ですが、この疑惑に関する報道が加速しています。その背景には何があるのか。アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏に寄稿してもらいました。 【写真】目立つワンマンぶり “トランプ革命”読み解く今後の注目点は
「特別検察官」が任命され緊迫度増す
ドナルド・トランプ大統領の政治生命に早くも暗雲が立ち込めてきた。「ロシア・ゲート」である。 ロシアとの不穏な関係をめぐり大統領補佐官(安全保障担当)の職を解かれたマイケル・フリン氏。その疑惑解明を率いてきた連邦捜査局(FBI)長官のジェイムズ・コミー氏がトランプ氏により電撃解任されたことで一気に緊張が高まった。 FBIが創設されたのは1908年。捜査の中立性を保つため、政権交代の影響を受けぬよう、長官の任期は異例の10年と定められている。これまで解任されたのはわずか1人(1993年にビル・クリントン大統領により解任されたウィリアム・セッションズ長官。長官自身の倫理違反が原因)。 それゆえ、今回の解任がトランプ氏による「司法(捜査)妨害」と受け止められても仕方ない。 すぐに想起されるのはリチャード・ニクソン大統領を辞任へと追いやったウォーターゲート事件の際の「土曜の夜の虐殺」であろう。自らの疑惑に迫ってきたアーチボルト・コックス特別検察官をニクソン氏が電撃解任した一件だ。当時のニクソン氏同様、今回、トランプ氏も相当追い詰められている印象を世間に与えることになった。 トランプ氏は近日中に後任のFBI長官を指名する予定だが、司法省はロバート・モラー前FBI長官を特別検察官に任命し、昨年の大統領選以来くすぶっているトランプ氏周辺とロシアとの癒着について、より独立性の高い捜査をするとしている。ちなみに日本の主要メディアの一部は「司法省のジェフ・セッションズ長官が特別検察官を任命した」と報じているが、セッションズ氏自身、トランプ選対の幹部としてロシアとの癒着がすでに疑われているため、本件には一切関与できなくなっている。モラー氏を任命したのは、正確には、ロッド・ローゼンスタイン副長官である。 いずれにせよ、特別検察官が任命されたことで「ロシア・ゲート」をめぐる情勢は日増しに緊迫度を増している。