北ミサイルはどこまで脅威なのか(上)日本の迎撃能力を超える量と技術も
(b)ムスダンとテポドン2号
ムスダンは、ノドンと同様に移動式発射機で運用され、発射を阻止することが難しいという特質は同じです。ただし、射程が3200キロ以上であり、グアムにも届くとみられています。 テポドン2号は、サイロで運用されており、位置は衛星などで把握できていると思われますが、発射の兆候を外部から確認することが困難な上、サイロは堅固に作られているため、威力の高い爆弾などでないと、破壊が難しくなっています。
■ディプレスト弾道とロフト弾道
ムスダンとテポドン2号は、ノドンと同様の特徴の他に、日本に対して使用される場合は、別の特徴に注目しなければなりません。それは、「ディプレスト弾道」、および「ロフト(あるいはロフテッド)弾道」と呼ばれる弾道ミサイルの特殊な攻撃方法が可能だということです。 ここからは、ムスダンに絞って、シミュレーションを行ってみます。テポドン2号は、ムスダン以上に“虎の子のミサイル”であり、こうした使用方法をされる可能性が低いためです。 弾道ミサイルは、基本的に打ち上げた後は、慣性と地球の重力に従い、落下するだけです。つまり、ボール投げと同じと言えます。 通常の発射では、最小エネルギー弾道と呼ばれる、最も長射程となる弾道でミサイルを発射します。この時、発射、そして落下時の角度は、約45度です。 これに対して、ディプレスト弾道は、野球のライナーのように、低い角度でミサイルを打ち上げる方法です。ロフト弾道は、これとは逆に、テニスのロビングと同じで、極端に高い角度で弾道ミサイルを打ち上げます。結果的に、射程はどちらも短くなります。 つまり、日本を大きく飛び越えることのできるこれらの弾道ミサイルは、日本を狙う際に使用する場合は、燃料を少なくしてノドンと同じような弾道をとるのでなく、ディプレスト弾道あるいはロフト弾道によって、攻撃が可能なのです。 このディプレスト弾道とロフト弾道は、質的に、自衛隊による弾道ミサイル防衛を突破できる可能性があります。 ここでは、シミュレーションを行うため、ムスダンの射程を、平壌からグアムにも到達可能な3350キロ程だと仮定します。