水道事業統合すれば料金抑えられるのか「負担する金額不透明」「後で問題が出たら子や孫に申し訳ない」 市民から質問や異論相次ぐ
長野県上田市、近隣自治体と水道事業統合を構想
長野県上田市が近隣自治体との水道事業統合を巡り開いた説明会で、統合後のハード整備に伴う各市町の負担金額が不透明である点などに市民から異論が相次いだ。 【図】上田市を含む5者の水道事業統合の範囲
利点は国補助を使った耐震化や・更新の推進
上田市は長野市、千曲市、坂城町、県企業局との任意協議会で検討する水道事業統合に関する本年度初の市民説明会を城南公民館で開いた。約40人が参加。市は、統合に伴う国補助は幅広い事業に使えるため、遅れている施設や管路の耐震化・更新を迅速に進められる―などと統合による利点を説明した。
「単独経営の場合は補助の対象外」
上田市は水道施設の耐震化率が浄水場で13・7%、管路で11・0%と5団体の中で遅れている。担当者は統合を条件に得られる国補助を使って「耐震化や更新が図れる」と説明。一方「単独経営だとほとんどが国補助の対象外。大変時間がかかる」と述べた。
「非常時対応の職員いなくならないか」住民懸念
統合で経営効率化を図るとした市に対し、参加者は「人員が減り、非常時に対応する職員がいなくならないか」と質問。市側は「事務担当の職員は統合で今より減らせるが、管路の確認や浄水場の運転など、現場を守る人の人件費は減らさない」とした。 「統合後も民営化はしないでほしい」との声も。市側は「利益を追求する民間に任せてはいけないと考えている。期間を定めて運営を委託する方法もあるが、行政が技術力を失ってはいけないので、やらない」と述べた。 上田市が5日開いた水道事業統合の市民説明会は、質疑応答だけで1時間45分を費やした。市は市民の疑問に丁寧に対応し、参加の可否を慎重に見極める必要がある。
市の予算に影響しない?
市など5団体は統合に伴う国補助を使った1千億円の投資で災害に備えた広域的な送水管整備や施設更新を進める構想だが、うち303億円は構成団体が一般会計から負担する。参加者は「上田市の他の予算に影響する」と懸念。市側は「負担割合は今後の検討」とするにとどまった。
「料金上昇抑えられる根拠分からない」財政試算に疑問視も
統合した方が単独経営より水道料金上昇が抑えられる―との任意協議会や市の財政試算にも「根拠が分からない」との声が続出した。別の参加者は「忙しく決めたから、後で問題があった、ということでは末代の子や孫に申し訳ない」と不安げに訴えた。