「純粋さ」を物語る無駄ないフォルム 現存1台のディマ1100(2) モータースポーツへの相当な熱量
モータースポーツへ向けられた相当な熱量
フィアット由来の4気筒ユニットは、カムに乗るとドライな咆哮を響かせ、平坦な場所なら積極的に加速。スルスルと、200km/hまで加速していきそうな勢いがある。 3速は、緩めのカーブで有用。ところが接地面が細く、ズルズルと外側へ押し出される。ヘアピンへ突っ込むと、フロントタイヤが路面で削られるのがわかる。登り坂なら、アンダーステアは控えめになるが。 前後ともドラム式のブレーキは、予想通りの強さ。レースという条件では、心もとないだろう。カーブでシフトダウンすると、リアアクスルが悶える。加速に備えて落ち着かせるには、挙動へ集中する必要がある。 コクピットはタイト。上半身が露出するが、主要な操作系は自然な位置にある。フロントガラス越しに、盛大に空気が流れ込んでくる。レストアで得た、座り心地の良い肉厚なシートが、ドライバーの風当たりを強くしているようだ。 ボディは再塗装され、内装の一部は仕立て直された。それでも、LF-11-52は驚くほどのオリジナル状態を保っている。 もし、ポルトガルで最初のスポーツカー・メーカーになるべく、予算が割かれていなければ。1.5L以下クラスでの競争力向上のため、DMは大きく姿を変えていた可能性が高い。ポルシェ550 スパイダーのような、ミドシップになっていたかもしれない。 とはいえ、90年前のクルマ好きなポルトガル人がモータースポーツへ向けた情熱は、相当な熱量だったことは間違いない。残された1台が、それをはっきり示している。 協力:マルガリーダ・パトリシオ・コレイア氏、ペドロ・フィリペ氏、マデイラ観光局 撮影:ジョエル・アラウジョ(Joel Araujo)
アーロン・マッケイ(執筆) 中嶋健治(翻訳)