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COVID-19の影響でAI開発が加速、医療や保険など

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EE Times Japan

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL:Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory)の所長を務めるDaniela Rus教授によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、既存の問題を解決するための機械学習アプリケーションの開発が加速しているという。  例えば、自動車保険業界ではチャットボットが非常に役立っているという。デジタル保険プラットフォームは、機械学習で動作し、申請者の運転履歴を調査したり、データを分析する他、保証範囲や価格に対してリスク指標を適用して、対面でやりとりせずに保険証券を発行することも可能だ。  CSAILは、2020年8月に開催したウェビナーで、「MachineLearningApplications@CSAIL」イニシアチブを開設し、最新の機械学習技術向けのアプリケーションの開発や、機械学習を制限する要因となっている課題の調査、デジタルワークフォース向けの専門技術開発を提供していく考えであることを明らかにした。  CSAILの研究をサポートするビジネスは、そのアプリケーションから直ちにメリットを享受することになる。チャットボットでは既に、機械学習を使用することによって、製品の推薦や、価格の最適化、システム内部での分類作成などを行っている。さらに広く見ると、企業では、機械学習を使用して省エネ化や予測分析などを行っている。  現在、小売業者や企業にとって重大な懸念事項となっているのは、COVID-19の拡大によって対面での取引が制限されているという点だ。Rus氏は、「機械学習とAIは、ビジネスプロセスを変えていく可能性を秘める」と述べる。 CSAILは数百件のプロジェクトを手掛ける  MITのAI関連の取り組みは、1959年までさかのぼる。MITのAI Labは、画像誘導手術の手法や、言語ベースのウェブアクセス、マイクロディスプレイ、ロボット工学など、さまざまな分野で先駆的な開発を実現してきた。CSAILは1963年に、AI LabとMITのLCS(Laboratory for Computer Science)が合併して設立された。LCSは、互換タイムシェアリングシステム(CTSS:Compatible Time-Sharing System)やMulticsを開発したことで広く知られている。  CSAILは現在、60以上の研究グループが進めている数百件のプロジェクトに携わっているという。  機械学習は、商取引によって自動的に生成されるデータを利用することにより、食料品店から5G(第5世代移動通信)ネットワークに至るまで、幅広い事業分野に適用できる。また、データを使用して、規則を派生させたり未来の行動を予測することも可能だ。CSAILの機械学習入門ウェビナーの中で、専門家たちが、「取引をデジタル化する機能は、健全な経済を実現する上での最優先事項とされている」と述べている。  Rus氏は、「一般的にデータは、隔離された状態だと、ビジネスにおいて何の役にも立たない。データをどう使うかが非常に重要であるため、データのテスト/検証を行い、テストシステムがどのようなプロセスと連携しているのかを慎重に検討する必要がある。また、ユースケースについても検討し、シミュレーションの中から何を取り出すことができるのか、そしてそれを実生活の中でどのように適用することができるのかという点を考える必要がある。機械学習が間違いをする場合もあるため、機械と人間が協力しなければならない。最終的な判断の責任を負うのは、人間である」と述べる。  CSAILとCSAILの研究を支援する企業は、その技術をできるだけ早く商用化することを目指している。Arrow ElectronicsとCisco Systems、Retail Business Services(Ahold Delhaize傘下)、SAPは、このMLイニシアチブの創設メンバーで、品質管理やサプライチェーン管理、コネクティビティ、予測などのアプリケーションを構想している。  EE TimesはArrow Electronicsに、MITのCSAIL研究アライアンスの創設メンバーになるためにどれだけ投資したかを尋ねたが、同社からの返答はなかった。  米国の調査会社であるIDC(International Data Corporation)によると、AIに対する世界支出は、2023年には979億米ドルに達する見通しだという。これは、2019年の375億米ドルの2.5倍以上に当たる。2018年から2023年の年平均成長率(CAGR)は28.4%と予想されるという。 医療/ヘルスケアは最優先事項  Rus氏は、「医療やヘルスケアはパンデミック下における優先事項であり、機械学習はこれまで何年もかかっていた医療研究の期間を数カ月に短縮できる場合もある。COVID-19のワクチン開発にかかる期間を数年ではなく数カ月と想定しているのは、機械学習によって開発を加速できるからだ」と述べている。  同氏は、「人間とAIのコラボレーションによって、診断の精度を高めることができる」と話す。ある放射線研究で、医師と機械がそれぞれスキャン画像を見てガン性組織か非ガン性組織を判断したところ、人間のエラー率は3.5%で機械は7.5%だったが、両者を組み合わせた診断ではエラー率は0.5%に減少したという。  「地方の医師や過労状態の医師が、常に最新の知見や研究をキャッチアップし続けなくてもよくなる日を想像してみてほしい。目の前の患者のデータを送信すれば、機械学習やAIが副作用の少ない薬を処方してくれる。スマートフォンが複雑な計算を支援するのと同じように、機械学習/AIが認知タスクや物理タスクを支援する世界を想像してみてほしい」とRus氏は言う。  Rus氏は、「機械学習の幅広い普及の障害となる要因の一つが、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)だ」と指摘する。同氏は、「チャットボットは処理を単純化するが、PCに不慣れな人にとっては使いにくい。言語翻訳は依然として問題がある。機械学習は、パターンマッチングによってある言語を別の言語に翻訳するが、文脈や意図には対応できない。その一方で、チャットボットはデータを保持し、人間より迅速に質問に答えることができる」と説明している。  同氏は、「機械学習は過去のデータが全てで、AI(ロボティクスも含まれる)は意思決定が全てだ。これらが、ビジネスあるいは個人が課題を解決する際に従来とは大きな違いを生み出しているのである」と語った。 【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

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